夫が妻を語る、など

矢部万紀子「「株式会社竹内まりや」を分析する夫・達郎がすごかった」https://dot.asahi.com/dot/2019100400068.html


NHKの番組『竹内まりや Music&Life~40年をめぐる旅』を巡って*1。その「一番の目玉」は山下達郎*2が妻である 竹内まりや*3を語るシークエンスだったという。たしかに。


竹内まりやが40年間続けてきた音楽スタイルは、どなたにでも受け入れていただける、いわゆるミドルオブザロード・ミュージックです」

 ミドルオブザロード・ミュージックって? 英語ができないので、そこで一瞬思考が停止する。後に英和辞典で引いたところ、「middle of the rord <人、政策、音楽などが>穏健な、中道の」とあって、ああ道の真ん中ね、「どなたにでも受け入れていただける」ことなのね、と理解した。ことほどさように山下さんの解説は丁寧で、わかりやすく伝えようと練った文言だったと思う。その結果、マーケティング講座で「株式会社竹内まりや」を分析するすご腕マーケッターの講義のようになった。講義のサマリーを書いてみる。

 株式会社竹内まりやは「トレンドに媚びず、普遍性を模索する」という姿勢を貫き、生産者としては「シンガーというより作詞家作曲家」という立ち位置を維持してきた。だから幅広い商品(「曲想」と表現していた)が生まれ、30年前の商品(「作品」と表現していた)でも古びない、と。そして、すご腕マーケッターは、講義の最後をこう締めた。


「そして何よりすべての作品に通底しているのが、人間存在に対する強い肯定感です。この考え方が、浮き沈みの激しい音楽シーンの中で、長く受け入れられてきた、最も大きな要素であると私は考えております」

 竹内さん、鬼に金棒だな。そう思った。優秀なマーケッターがいれば、生産に当たってブレずにすむ。「うちの会社が作る商品って、こうだよね」と確認しながら、商品を作る。その拠り所を可視化してくれるからだ。しかもそのすご腕マーケッターが「売れる根底にあるのは、あなたの感性だ」と言ってくれている。自信を持って、進んでいける。

そして、「人生の扉」;

山下さんの解説の後、竹内さんは年齢と共に訪れた心境の変化を語った。30代、40代の時は無我夢中で、「次」のことを考えていた。50代を過ぎ、「こんなことがしたい」と思えることが、とても幸運なのだと気づいた。60歳になってからは、瞬間瞬間が愛おしいと思えるようになった、と。

2007年に発表した「人生の扉」という曲がかかった。51歳になって桜を見て、「あと何回、この桜を見るのかな」と思う自分がいることに気づき、まっすぐに表現したと竹内さん。年齢を重ねることを肯定する「応援歌」だった。

 サビは英語だ。「I say it’s fun to be 20 You say it’s great to be 30」から始まる。この調子で、40歳は「lovely」、50歳は「nice」、60歳は「fine」、70歳は「all right」、80歳は「still good」と続き、90歳も「maybe live」と予想した。その上で、弱っていくことは「sad」、年をとること は「hard」で、人生は「no meaning」って言うけれど、と歌って、こう締めくくる。「But I still belive it’s worth living」

「人生の扉」は最初小野リサさんのカヴァー*4を聴いたのだった。そのとき、戦慄を覚え、やはり「あと何回、この桜を見るのかな」と指折り数えてしまった。
Japao 2

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