怒れる車たち

渡辺陽一郎「あおり運転の知られざる原因!? クルマのデザインが「怒り顔」になった理由とは」https://kuruma-news.jp/post/167550


21世紀に入って、自動車のフロント・マスクのデザインが「怒り顔」になっているのだという。


いまの各メーカーやブランドの顔立ちは、統一された表現をしながら、競うように目を吊り上げた怒り顔にするなどインパクトを強めています。

 以前はフロントマスクが穏やかだったアウディも、2000年代に入ると開口部を大きく見せる「シングルフレームグリル」を採用しました。

 極端ないい方をすれば、前走車のルームミラーに映ったときにインパクトがないと、道を譲ってもらえないなどの不都合があり、クルマの売れ行きにも影響を与えるのです。そこで世の中のクルマが全般的に怒り顔になったというわけです。

 これは、弱肉強食的な世界観でもあるでしょう。存在感の強い怒り顔で、前方の車両に道を譲らせながら、自分は追い越し車線を突っ走る感覚です。

 昨今の状況を考えると、あおり運転を連想します。あおり運転をするのが怒り顔のクルマとは限らず、問題があるのはもちろんドライバー自身ですが、弱肉強食的な世界観とデザインが与える心理的な影響も皆無ではないと思います。

 自動車メーカーは、クルマとドライバーの心理を、脳科学の観点も踏まえて多角的に研究しています。例えばアームレストなど内装の肌触りは、赤ちゃんの肌と同等の摩擦にするとリラックスできるとか、スイッチを押した時の感触なども含めて多岐にわたります。脳波や心電図でスタッフを測定しながら、心身ともに最良の状態で運転できる開発を進めています。

 そうなると安全の観点から、クルマのデザインが、ドライバーの運転に与える影響にも力を入れて研究すべきでしょう。道を譲らせながら走る弱肉強食的な運転は、危険に繋がるからです。逆にドライバーに優しい運転をさせるデザインがあれば、安全性も高められるといえます。