「過去をみくびる」

最果タヒ『十代に共感する奴はみんな嘘つき』から。


私の言葉は三井には届かないだろう。彼らは私の年齢をちょっと哀れんで、そして見くびって、語るしかできないのだ。過ぎ去ってしまったから。私は自分が小学生の頃、中学生の頃、どれほどばかで、どれほどまともだったのか。はっきりとは覚えていない。クレヨンで描き殴ったような過去の光景が思い浮かんで、あのころはバカだったとか言い捨てる。私はきっと自分の過去をみくびることで今の自分を正しいだとか大人だとか思おうとしている。軽蔑すべき軽蔑で、出来上がっている肉体。(pp.88-89)
この小説の冒頭は、

感情はサブカル。現象はエンタメ。
つまり、愛はサブカルで、セックスはエンタメ。(p.7)
この些か意味がわからない2行は読者を小説世界に拉致するのに十分。