『往古来今』

往古来今 (文春文庫 い 94-1)

往古来今 (文春文庫 い 94-1)

4月以来、数十冊の本を読了しているのだけれど、なかなか他人に報告し・シェアする機会がない。私自身の備忘のためにも徐々に報告を開始していくことにする。
数日前に礒﨑憲一郎*1『往古来今』を読了。


過去の話
アメリ
見張りの男
脱走
恩寵


あとがき
解説(金井美恵子

連作短篇集。何故本としてのタイトルが「往古来今」なのか。これを今すぐに言語化するのは難しいのだけど、カヴァーに使われている横尾忠則*2の「N.P」という絵のイメージを一言で表せば「往古来今」といえるだろう。
最後の、日本人の布哇移民史を題材とした「恩寵」を除いて、具体的な物語世界(地理的なトポスや共通の登場人物)の共有が認められるけれど、「恩寵」を包括した上で、この本について語る鍵言葉は、


逃走


ということかも知れないと思った。4番目の短篇のタイトルは「脱走」である。因みに、同じ著者の『電車道』では〈逃走〉によって物語が開始されているのだった。

電車道 (新潮文庫)

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