最初は蹴っていた

三浦佑之*1野見宿禰の墓」『図書』(岩波書店)841、pp.54-57、2019


ノミノスクネ*2は「土師氏の祖」(p.55)*3であるとともに、「相撲の元祖」としても知られている。


日本書紀のイクメイリビコイサチ(垂仁天皇)の七年、天皇が、当摩蹶速*4は天下の力士だと聞いているが、並ぶものはいるかと尋ねると、ある臣下が、出雲国の勇士、野見宿禰がいるというので、召し出して「力」*5をさせた。すると二人は「各足を挙げて相蹶う。[野見宿禰は]すなはち当摩蹶速が脇骨を蹶ゑ折り、また、その腰を踏み折りて殺」してしまった。(pp.54-55)
三浦氏は「まるでキックボクシング」だと述べているが(p.55)、とにかく相撲というのはその起源において、相手を蹴るものだったわけだ。現在の角力で蹴る技というと、けたぐり(蹴手繰り)くらいしかない。それで、一瞬吃驚したのだけど、野見宿禰に蹴り殺されてしまった「当摩蹶速」(当麻蹴速)というのは蹴るのが速い人という意味だ!

*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160821/1471803952

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20070830/1188468360 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20141128/1417189544 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20171129/1511961577

*3:ということは、菅原氏や大江氏の祖でもある。

*4:「たぎまのくゑはや」というルビ。「当麻蹴速」という表期の方が一般的だと思うけれど。

*5:「ちからくらべ」というルビ。