柘榴など

おおしまりえ*1「怪しい“妊娠できる石”に、赤富士の絵…妊活開運グッズの闇」https://joshi-spa.jp/860114


曰く、


妊活開運グッズといえば、少し前にフリマアプリ『メルカリ』で売られていた『ざくろの絵』や『妊娠米』*2が有名でしょう。

 妊娠米は、妊婦からお米をもらうと妊娠菌がついていて妊娠しやすくなるという、まるで生理の子の近くにいると生理がうつるという都市伝説さながらの内容です。医学的根拠がないと問題になり、メルカリは削除しました。

 ざくろの絵は、妊婦の書いたざくろの絵を寝室にかざると子宝を授かるというジンクスで、自称妊婦がメルカリ内で多数のザクロ絵画(といっても落書きレベル)を出品していましたが、今は見かけません。

 しかし最近は『赤富士』なるものがブームらしく、こちらはまだメルカリで見つけることができます。

 赤富士とは、妊婦が陣痛中に赤ペンで書いた富士山のイラストで、これをもらうと妊娠できるというもの。

正直陣痛中にそんなことする余裕があるのか……と驚愕するのですが、出産経験者に話を聞くと、陣痛きたてならけっこー余裕とのこと。

 とはいえ、メルカリに出されているものが本当に陣痛中の執筆か確認するすべはなく、中には『コウノトリとザクロもプラスして書きました♪』と、お得感をアピールするモノも。

こういうのは、「医学的根拠がない」というか、科学的準位においてはトンデモということなのだが、象徴的準位或いは修辞学的準位においてはそれなりの筋が通っており、そのことによって、信じているか信じていないかを問わず理解が可能になるものだ。これらのものすべてに共通するのは「妊婦」ということだろう。「妊婦」が持っていたもの、「妊婦」が「書いた(sic.)」「絵」を所持することで、自分もそれらのもののオリジナルな境位(element)である「妊婦」になることができる。このように理解することは可能だ。ただ、これだと、「妊婦」が持っていたもの、「妊婦」が描いたものなら何でもOKということになる。何故「お米」なのか、「ザクロ」なのか、「赤富士」なのかを理解するためには別の枠組が必要だ。「お米」については、精子のメタファーなんだな、とか。でも、「ザクロ」や「赤富士」についてはちょっとわからない。そういう絵を買う人は、何かしらぴんと来るものがあるからこそ買うのだと思う。また、売る人も買い手の〈ピンと来る〉を当てにしている。それは何なのか。「ザクロ」からはエロティックなイメージが喚起されるということを以前書いた*3。でも、そこから「妊婦」というのは直接結びつかない。勿論、エロは「妊婦」になるための前提ではあるけど。「赤富士」だけど、実際の画像を見ると、多くは身籠った「富士」になっているのが多い*4。「富士」は妊娠した女体のメタファーということになる。「富士」に限らず山というのは一般的に女性として表象されているわけだが*5、「富士」=妊婦というイメージが歴史的にどのように構成されてきたのかはわからない。
さて、「妊娠できる石」。これは「妊婦」との場所的な繋がりはもっていないようだ。実は「石」と「妊婦」は神功皇后を介して、けっこう密接に結びついている。神功皇后は安産の神でもある。ただ、あくまでも安産であって、その前提としての孕むこととはあまり関係がないようなのだ。そうすると、神功皇后ではなく、或る種の「石」が生命的な生成力を持つという信仰と関係あるのだろうか。「さざれ石の巌となりて苔のむすまで」*6