給食の話(横浜)

キャリコネ編集部「“愛情弁当”信仰が原因? 横浜市、いまだに実現しない中学校給食 「母親は5時起き、父子家庭は手がまわらないことも」」https://news.careerconnection.jp/?p=55224


神奈川県横浜市では中学校の給食が実施されていないのだという。


保護者が中心の市民グループ「横浜にも中学校給食があったら『いいね!』の会」では、2015年に市民アンケートを実施。3372人のうち95.7%が給食を実施してほしいと回答した。

さらに保護者からは「朝5時に起きて弁当を作るのが大変だ」といった意見が寄せられたという。同会の担当者は、弁当作りの大変さについてこう話している。


「中学になると部活があるので、朝早く起きないと間に合いません。夏場はお弁当が痛むのも悩みの種です。また家庭によって様々な事情があり、父子家庭や、障がい児のいる家庭ではお弁当作りに手が回らないということもあるようです」
生徒の家庭が様々な事情を抱える中、毎日の弁当作りを求めるのはやはり無理があるのだろう。そもそもなぜ横浜市には給食がないのか。市の教育委員会の担当者は、

「1950年代後半から1960年代にかけて、人口が急増し、学校建設が急ピッチで進められました。そのとき教室を優先して建設を進めたため、給食室の準備が遅れてしまったんです」
と説明する。給食室がなく、給食を作れない学校が多いというのだ。しかし同会では、「小学校で作って中学校に運ぶこともできますし、老朽化した校舎を建て替える時に給食室を設置すればいいのではないでしょうか」と代替案を提案している。

また同会は、「愛情弁当」という考えが給食の実現を阻んでいるのではないかとも指摘している。”母親が作った弁当”といえば聞こえはいいが、当の母親の負担になってしまっているのが現状だ。

先ず、「市民アンケート」ということだけど、どういう人がサンプルになっているのか。「アンケート」に言及する際にはサンプルを明記しなければ意味はない。また、「同会は、「愛情弁当」という考えが給食の実現を阻んでいるのではないかとも指摘している」ということだけど、「横浜にも中学校給食があったら『いいね!』の会」が勝手に主張しているように読めてしまう。教育委員会とか給食反対派の「愛情弁当」に関する言説が示されていないので。
横浜市教育委員会の言い分も説得的ではない。「給食室がなく、給食を作れない学校が多い」というけれど、習志野市では40年以上も前から、小学校は自校の給食室でつくる、中学校は給食センターでつくって各校へ配給するという方式だった。給食センターを1箇所建設すれば全ての中学の給食を賄えることになる。さらに民間に投げるということだと、例えば橋下徹が市長時代に導入した大阪市の「デリバリー方式」。「校内に調理室を設けず、業者が調理した仕出し弁当を学校の配膳室に届ける」*1横浜市でいうと、「ハマ弁」の給食化ということになる。

同会は「ハマ弁」について、「私たちが求めているのはあくまで給食です。皆で同じものを食べなければ、食材や献立について学ぶ『食育』もできません。『ハマ弁』に割いている予算を給食実施に使ってほしい」と話している。

しかし当の横浜市は、依然として給食を実施する予定はないようだ。教育委員会の担当者は、「給食を求める声が少なくないということはわかっています。しかし横浜市が目指すのは『ハマ弁』の喫食率向上です」と話す。

利用率を上げるため、今年4月には最大130円の値下げに踏み切った。今後は、当日でも予約できるように仕組みを見直していくという。

「食育」は重要だと思うけれど、毎日やる必要があるのか。また、「食育」としては、生徒が食べるだけではなく、野菜の栽培や調理にも参加する、もっと綜合的なプログラムを考えた方がいいのでは? また、「皆で同じものを食べなければ」というけれど、そうはいかない多様性という問題に私たちは直面しているのではなかったか。アレルギーの問題にはみんな敏感になっているわけだし、ムスリムユダヤ教徒の子はどうするの? ということだ。或いは、ヴェジタリアンとして育てられた子もいるかも知れない。


息子が小学校に上がって、給食がないので、毎晩深夜、息子を寝かしつけた後に、息子の弁当をつくっている。私自身は学校給食についていい思い出なんか殆ど持っていないのだけど、親が作る弁当を食べるより学校給食の方が料理の豊富なヴァラエティを経験することはできるかなとも思った。因みに、今日の息子の弁当は豚の挽肉のドライ・カレー。

学校給食は、給食がなければ栄養失調になってしまうというような貧困の問題と関係していることはたしかだ*2。しかしながら、上掲の記事を見る限り、横浜市の給食推進派も教育委員会も貧困問題を争点化していないね。