DNAそのほか

承前*1

山本徹美「「袴田事件」再審棄却は明らかに間違いだ」http://blogos.com/article/304889/


曰く、


即時抗告審で争点となったのは、犯行時の着衣とされた衣類に付着した血痕のDNA型鑑定であった。その衣類のひとつ、半袖シャツに関して、検察側は、袴田さんが被害者と格闘した際に負ったもの、としていた。袴田さんの血液型はB型で、右肩部分の血痕と血液型は一致する。ちなみに、被害者である味噌会社の専務はA型、夫人はB型、長男はAB型、次女はO型であった。

シャツの右肩部分にある血痕について、静岡地裁では、弁護側が依頼した筑波大の本田克也教授も、検察側が推薦した鑑定人も、袴田さんのDNAとは一致しない、とした。なお、検察側鑑定人は、自身の鑑定結果に責任がもてない、と取り下げてしまう。

「検察側が推薦した鑑定人も、袴田さんのDNAとは一致しない、とした」のか。その方法は本田氏の方法とは別の方法だった? また、「取り下げ」るに際して、圧力とかはなかったのか。

4年間もかかった即時抗告審では、DNA型鑑定について審理が進められた。高裁は、東京高検の推薦による大阪医大の鈴木廣一教授に鑑定を委嘱した。鈴木教授は、本田教授のDNA型鑑定に用いられた試薬にはDNAを分解する酵素があるとして、再現実験には着手せず、別の鑑定方法を採用。結局、半袖シャツ付着血痕のDNA分析は不可能と結論づけたのである。

弁護側は、鈴木教授が理論のみで否定し、本田鑑定の追試を実行しなかったことを批判。実験には無縁の弁護士が、本田教授のマニュアルにのっとり、同種の器具、同量の薬品を用いて、9種類の血液付着物からDNA検出を試みた。その中には味噌漬けにして7年間以上経過した血液もあったが、すべて、DNA検出に成功した。その経緯をDVD動画に収録し、高裁に提出、証拠として採用された。

こうした経緯から、弁護側は、本田鑑定による新証拠の能力に自信をもっていた。が、「証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる」、いわゆる自由心証主義により、大島裁判長は、袴田さんの無罪を証明する証拠とは認められない、と退けたのである。

「東京高検の推薦による大阪医大の鈴木廣一教授」の「鑑定」の結果は「DNA分析は不可能」。ここから、袴田はクロと推論することは、「原審において提出された証拠はじゅうぶんに審理されている」ということを素朴に信じているのでなければ、できないと思った。そんなことが素朴に信じられないからこそ、「再審」が請求されているわけだ。
山本氏は、「犯行時の着衣とされた衣類」それ自体が「袴田さんが逮捕され、拘留された後、何者かが「捏造」し、タンクに仕込んだ」可能性が高いと主張している。そして、「衣類」のポケットに入っていた「王こがねみそ」と記されたマッチ箱から、「捏造」の時期を「67年2月以降」と推論している。