一線を越える理由

山崎春奈*1「全員、人殺し。「ヤバい人たちのヤバい飯」を知るヤバいグルメ番組がマジでヤバい」https://www.buzzfeed.com/jp/harunayamazaki/hyperhard


テレビ東京の『ハイパーハードボイルドグルメリポート』*2のプロデューサー、上出遼平氏へのインタヴュー。興味深ったのは、リベリア*3元少年兵たちによる内戦*4時のカニバリズム*5の動機について(これは実際の番組には組み入れられなかった);


――放送に入れられなかった印象的なエピソードはありますか。


「元人食い少年兵」の言葉の背景はもう少し説明したかったです。

リベリアでは、内戦時に兵士が敵の人肉や心臓を食べたという話はわりに有名です。現実と思えないような話がたくさん伝わっています。

でも、いざ彼らに「みんな人を食べたことあるの?」と聞くと「俺はない」「人間の肉を食べると腹がふくれてそのまま死ぬんだ」ってあっさり否定するんですよ。でも、2人きりになった時に「マジで知りたいんだけど」と聞くと、少し黙り込んでからうなずくんです。「俺も嫌だったんだけど」。

彼らにとって人を殺すのはもはや日常だったと思うのですが、「人食い」は越えたくない一線というか、どこか後ろめたいんでしょうね。その感覚は、直接話して初めて理解しました。

西アフリカは呪術の文化が強く、軍にも“ドクター”として呪術医が同行していたんです。「今から子どもの目玉を3人分とってこい、飲めばあの壁の向こうが見える」「敵の少年兵の心臓を食え、そしたら相手の弾は当たらない」……少年だった彼らはコカインを吸って、大人に言われるがままに“一線”を越えていくわけですよ。

そんなことをさせた呪術医を怒ったり恨んだりしているのかと思うじゃないですか。本人たちは「なんであんなこととは思うよ。でも、だから生きてるんだぜ、今」って言うんです。

なんか……どう捉えるか難しいなって。「だから、壁の向こうが見えた」「だから、弾が当たらなかった」は彼らにとって真実なわけです。実際に、周りがことごとく死んでいく中で生き残ったのですから。

――壮絶……。


僕らの感覚とは、かけ離れていますよね。時間的にうまくまとめきれずにカットしてしまったのですが、こういう背景があったと思って見てもらえるとまた見方が変わるかもしれません。

リベリア内戦におけるカニバリズムについては、例えば、


Jennifer Birdsall “Liberian Civil War Cannibalism” http://manchesterhistorian.com/2015/liberian-civil-war-cannibalism/


をマークしておく。また、「リベリア内戦〜生き抜いてきた人々〜」というblog記事でもカニバリズムのことが言及されている。