Lonesome, ransom

北朝鮮の関与が指摘されているグローバルなランサムウェア攻撃*1が生起してからまだひと月も経っていないのだった。
ランサムウェア」を製造したとして、中学三年生が捕まる。
『ハフィントン・ポスト』に転載された『朝日新聞』の記事;


ランサムウェア』作った容疑で中3逮捕 「力試しにやったらできた」
朝日新聞デジタル | 執筆者: 朝日新聞社提供
投稿日: 2017年06月05日 18時58分 JST 更新: 2017年06月05日 18時58分 JST RANSOMWARE


身代金ウイルス作成容疑、中3を逮捕「力試しに作った」

 「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれるコンピューターウイルスを自作したとして、神奈川県警は5日、大阪府内の中学3年の男子生徒(14)を不正指令電磁的記録作成・保管の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。ランサムウェアの作成容疑での立件は全国初という。任意の捜査に生徒は「力試しに作ってみたらできた」と話したという。

 ランサムウェアとは、メールで送られてきた文書などを開くとパソコンのデータが使えなくなり、金を要求されるウイルス。様々なタイプがあり、5月に起きた世界規模のサイバー攻撃で使われるなど、感染被害が急増している。

 捜査関係者によると、生徒は1月、自宅のパソコンでランサムウェアを作り、4月にかけて保存していた疑いがある。感染するとショッピングサイトの電子マネーを要求する内容の画面が表示されるという。

 作成に必要なデータを海外のサイトから集め、作った後は海外サイトにアップロード。任意の調べに生徒は「100人以上がダウンロードした」と説明したが、捜査ではダウンロード先は確認できておらず、金銭被害も把握していないという。

 生徒のパソコンからは別のウイルスも見つかっており、県警は生徒が作ったとみて調べる。

 セキュリティー大手トレンドマイクロによると、国内で昨年1年間にランサムウェアが検出されたパソコンは約6万5400台で、前年の約10倍。新たなタイプのものが世界中で次々に確認され、昨年だけで247種にのぼったという。(佐藤栞)

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 ランサムウェア パソコンに保存された文書や画像などのファイルを暗号化して閲覧できないようにしたり、パソコンを強制的にロックして使えないようにしたりするウイルス。感染すると、元に戻すことと引き換えに、仮想通貨や電子マネーなどを支払うよう要求される。2013年ごろから世界的に広まった。「ランサム(ransom)」は英語で「身代金」の意。

朝日新聞デジタル 2017年06月05日 14時11分)
http://www.huffingtonpost.jp/2017/06/05/ransomware_n_16952370.html

ランサムウェア」に限らず中学生や高校生による「サイバー犯罪」が増えているという話;

中高生のサイバー事件増加 「尊敬される」「有名に」

佐藤栞

2017年6月5日13時43分

 「ランサム(身代金)ウェア」を自作したとして、神奈川県警が5日、大阪府内の中学3年の男子生徒(14)を不正指令電磁的記録作成・保管の疑いで逮捕した。「力試しで作ってみた」。捜査関係者によると、この生徒は神奈川県警の任意の調べにそう供述したという。海外サイトにアップロードした後には、ツイッターでそのサイトのURLを広めていたという。

 サイバー事件で中高生が摘発される例が近年目立つ。パソコンを起動できなくするウイルスに感染させたとして、2013年に県警が書類送検した中学生は「ウイルスを持っていると尊敬されるので、武器として持っていた」と供述。オンラインゲームを有利に進める不正プログラム「チートツール」を作成したとして14年に県警が書類送検した高校生らは「有名になりたかった」と話したという。

 今回のような不正プログラム作成事件ではないものの、警察庁が年代別の容疑者数を公表している不正アクセス禁止法違反事件をみると、摘発された14〜19歳は昨年1年間で62人で、全体の31%を占めた。刑法犯全体では14〜19歳は13・9%で、少年がサイバー犯罪に関わる割合は高い。

 子どもとインターネットの関係に詳しい筑波大の土井隆義教授(社会学)は「今の子どもたちは日頃からネットに親しんでいるうえ、サイバー犯罪は被害者が見えにくい。違法行為の自覚がないまま、誰かに認められたいという『承認欲求』を満たそうと手を出してしまうことがある」と指摘する。セキュリティー大手トレンドマイクロの染谷征良さんは「中学生でも危険なウイルスを簡単に作れる時代。ネットで検索すれば、ウイルスを作る方法にいくらでも触れられる。今後、小学校でプログラミング教育が導入されるが、やってはいけないことを伝える倫理面での教育もしてほしい」と話す。(佐藤栞)
http://www.asahi.com/articles/ASK627F5RK62ULOB027.html

「武器」としてのマルウェア。これって、気の弱い少年がナイフを護符として持ち歩くということに似ているのだろうか*2。勿論、どちらの場合も、伝家の宝刀というか、実際に使ってしまったらシャレにならないわけだろうけど。「尊敬」されたい、「承認欲求」という動機。「尊敬」や「承認」が交換される、些か背徳的な〈クラッカー〉の共同体が存在し、「サイバー犯罪」に手を染める少年たちはその末席に連なっていることを実感しており、犯罪によってそのメンバーシップをより確実なものにできると意識しているということなのだろうか。だとしたら、染谷征良さんが提案する「倫理面での教育」は有効なのだろうか。「承認欲求」を背徳的ではない仕方で満たすよう仕向けること、背徳的な共同体よりも広くて包括的な世間一般という共同体に彼/彼女らの「承認欲求」を投影させるよう仕向けることが肝要なのではないかと思う。或いは、背徳的な仕方では「承認欲求」は満たすことができないということを思い知らせること。
ところで、「ランサムウェア」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160320/1458493155も参照のこと。