「殺意を否認」

承前*1

毎日新聞』の記事;


<糖尿病小2死亡>自称祈とう師の男が殺意否認 宇都宮地裁

毎日新聞 3/6(月) 11:01配信


 ◇インスリン投与中止を両親に指示 裁判員裁判初公判

 1型糖尿病だった宇都宮市の小学2年の男児(当時7歳)にインスリン投与をさせずに死なせたとして、殺人罪に問われた栃木県下野市小金井1、建設業、近藤弘治被告(62)の裁判員裁判の初公判が6日、宇都宮地裁(佐藤基裁判長)であった。弁護側は「(近藤被告は)治療が正しいと信じていた」として殺意を否認し、「インスリンの投与をやめることを(男児の両親に)強く勧めたわけではない」などと無罪を主張した。判決は24日の予定。

 起訴状などによると、男児の両親から治療方法について相談を受けた近藤被告は、2015年4月7日から27日までの間、定期的にインスリンを投与しなければ死亡する恐れがあると知りながら、両親に投与を中止するように指示し、衰弱死させたとされる。

 県警などによると、近藤被告は祈とう師を自称し、「不治の病を治せる」などと両親に治療をもちかけた。そのうえで、「(男児の)腹の中に死に神がいる」「体調が悪くなるのは信心が足りないからだ」などと両親に話し、インスリンの投与を中止させたという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170306-00000023-mai-soci

産経新聞』は近藤のエクサイトぶりを強調している;

開廷1分…「八百長裁判長!」連呼しながら被告退廷 糖尿病児衰弱死事件で初公判

産経新聞 3/6(月) 13:28配信


 祈●(=示へんに寿の旧字体)師(きとうし)を自称し、1型糖尿病だった小学2年の男児インスリン投与を中止させて衰弱死させたとして、殺人罪に問われた栃木県下野市、建設業、近藤弘治被告(62)の裁判員裁判初公判が6日、宇都宮地裁(佐藤基裁判長)で開かれ、弁護側は「殺意はなかった」として無罪を主張した。近藤被告は開廷直後から佐藤裁判長を非難する発言を続け、人定質問後に退廷を命じられた。審理が一時中断し、被告不在で手続きが再開された。

 入廷した近藤被告は「始まる前にちょっと」と言いかけ、佐藤裁判長に「始まる前は発言禁止です」と止められると、持ち込んだ大量の資料を証言台の上に置き、長椅子にも資料を置くように刑務官に指示した。

 裁判員が入廷すると、またも「開廷前に一言」と言い、制止した佐藤裁判長に対して「あなたは罷免だ! 冤罪(えんざい)だ!」と叫んだ。氏名や住所を答え終わると、「これを出させてください」と資料を指し、「発言を禁止します」と制止されても、「この資料の中に真実が入っているんだ」と叫び、退廷を命じられた。

 「八百長裁判長!」と連呼しながら刑務官に連れられ、開廷1分ほどで退廷させられた。

 冒頭陳述で検察側は「インスリンを投与しなければ被害者が死亡する危険性を認識していた。助けるには被告の指示を従うしかないと、両親に思わせていた」と述べた。両親から約420万円の報酬を受け取ったとも指摘。両親を利用したか、両親と意思を通じた共同正犯として殺人罪が成立すると主張した。

 一方、弁護側は「近藤被告は治療が正しいと信じていた」として殺意を否認。「インスリン投与をやめることを両親に強く勧めたわけではない」と述べた。

 起訴状によると、宇都宮市の今井駿(しゅん)君=当時(7)=の両親から相談を受け、インスリンを投与しなければ死亡する可能性があると知りながら、平成27年4月ごろ、両親に投与中止を指示し、同27日に死亡させたとしている。

 近藤被告は「龍神」と名乗り、祈●(=示へんに寿の旧字体)師を自称。治療と称し、駿君の体をさすって「死に神退散」と呪文を唱え、ハンバーガーなどの特定の飲食物を摂取させるよう指示していた。27年11月、殺人容疑で逮捕された後、鑑定留置を経て、昨年6月に起訴された。駿君の両親は保護責任者遺棄致死容疑で書類送検され、起訴猶予処分となっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170306-00000530-san-soci

「殺意を否認」というのはあくまでも弁護士の発話だったわけだ。罪状認否を行う以前に「退場」だったわけだから。ところで、弁護側の主張にはすごくわかりやすい矛盾がある。近藤が自分の「治療が正しいと信じていた」としたら、「強く」かどうかはわからないけれど、自信をもって「インスリン投与をやめることを」「勧めた」筈だ。本当に「勧めたわけではない」としたら、自分の「治療」が無効であることを知っていたということになる。近藤は自らダブル・バインドに嵌ってしまったわけだ。