「朝毎読に入れなかったお前が悪い」

『ワセダクロニクル』*1のボスは花田達朗先生なのか。学内にもネタは転がってるよ、そこんところ夜露死苦! と突っ込む余地はあるはあるのだろうけど、かなり本気であるようだ*2。その最初のスクープ、電通が某製薬会社のステマ記事を共同通信に書かせていたという「電通グループからの「成功報酬」」*3を巡って、斎藤貴男*4曰く、


鉄鋼業界の担当記者というのを少しやってたんですが。忘れもしません。ワセダクロニクルで取り上げていたような「買われた記事」というのを自分でも体験してしまったんですね。

記者クラブにいたら、部長から電話があって「今すぐ社に上がってこい」と言われて行ったところ、60歳くらいのおじさんを紹介されて、「今からこの方が言うことを記事にしろ」と言われて書いたんですね。

どこかの中小企業の社長さんらしくて「我が社の経営戦略」ということを滔々と語るものだから、「ナントカ会社は○日、○年度までの中長期計画を明らかにした。それによると…」なんて、結構カッコいい原稿を書いて、次の日に一面に大きく載りました。

でも鉄鋼業界担当なのに鉄の話でもないし、「何で俺がこんなのやるんだろうな?」と思ったんで、部長に聞いたら、こういう返事でした。

「君が書いたあの記事を持って、彼は銀行に行く。すると融資が下りることになっとる。我が社もそれなりの物はいただいた。おっと、君の言いたいことは分かるが、これは君の給料にもなるんだから、ここは何も言うな」と、言われました。

「俺は一体、何をしているんだろう。記者になりたかったはずなのに、こんな恥ずかしいことをしているのか」と思ったんだけど、そもそもうちの新聞はそんなに信用されてないし、中小企業の役に立てるならいいか……と、そのときは割り切ったんですが、記者クラブに戻って隅っこの方で泣いてたんですね。

すると隣の別の業界紙の先輩から「お前、うっとうしいんだ。俺たちは普通の新聞記者とは違うんだ。そもそも、朝毎読(全国紙の朝日、毎日、読売)に入れなかったお前が悪いんだ」と言われて、「それもそうだ」と思って諦めたんです。
(Cited in 安藤健二「「君の記事でそれなりの物は頂いた」上司の言葉に記者クラブで泣いた。斎藤貴男氏が語る」http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/19/takao-saito_n_14855526.html

「そもそも、朝毎読(全国紙の朝日、毎日、読売)に入れなかったお前が悪いんだ」という言葉は正しい*5。「ステマ*6という言葉ができるずっと以前から、「業界紙」というのはそういうものだと思われていたのでは? 今回だって、「共同通信」だからスクープとしての価値があったといえるかのかも知れない。「業界紙」だったら、麻生あそうという反応だけだったと思う。まあ、「業界紙」だけでなくて、ファッション雑誌*7も含む情報誌は押並べて同様の問題を抱えており、実際90%はステマだとしても残りの10%で何ができるのかという発想でやっているんじゃないかと思う。

*1:http://www.wasedachronicle.org/

*2:See 亀松太郎「記者2千人の朝日新聞が「調査報道」できないのはなぜか? 朝日出身「ワセダクロニクル」編集長が語る理由」https://news.yahoo.co.jp/byline/kamematsutaro/20170219-00067858/ これは『ワセダクロニクル』の渡辺周編集長へのインタヴュー。

*3:http://www.wasedachronicle.org/articles/buying-articles/1/

*4:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060226/1140927585 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061011/1160575458 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061103/1162518655 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061129/1164772401 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070713/1184353368 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081031/1225433387 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110710/1310316856 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111018/1318909791 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120115/1326632650 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130321/1363830350 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130322/1363912905 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130323/1364055511 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131217/1387236286 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141005/1412531465 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161231/1483158794 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170204/1486217149

*5:どうして産経が入ってないの? という突っ込みが熱湯浴からあるかも知れない。

*6:Mentioned or used in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150301/1425180108 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160722/1469152379 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161019/1476847878 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161222/1482375761 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170115/1484442452

*7:See eg. 小林直子「ファッション誌を読んでも、おしゃれになれないワケ」https://joshi-spa.jp/662811