Posthumous publications

承前*1

東京新聞』の記事;


振り絞り著した「社会運動」 道場親信さん遺稿 相次ぎ出版

2016年12月24日


 戦後社会運動の研究者で今年九月急逝した和光大学教授の道場親信(みちばちかのぶ)さん=享年四十九の遺業の出版が相次いでいる。十月には一九五〇年代に全国で盛り上がったサークル文化運動の一つを取り上げた「下丸子文化集団とその時代」(みすず書房)が、今月末には編集に関わった「『うたごえ』運動資料集」(金沢文圃閣)など二冊が出版にこぎつけ、共著の一冊も近く出る予定。一月九日には東京都内で偲(しの)ぶ会が催される。 (小寺勝美)

 道場さんは六七年生まれ。早稲田大学大学院で社会運動を研究、ありとあらゆる古書や資料を買い集め、各種運動のパンフレットやビラを取り寄せていた。妻の松本麻里さん(49)は「イラク戦争反対運動を見て社会運動の研究にのめり込んでいきました」という。

 昨年秋ごろから「疲れやすく、だるい」と不調を訴えながら今年一月の人間ドックまで「だましだまし仕事を続けていました」と麻里さん。胆管がんと分かり、余命一年と宣告され急激に悪化して亡くなった。「最後の最後まで資料を読み、ヨタヨタしながらゲラの校正をしていました」

 「下丸子文化集団…」は五〇年代、米軍関係の工場や大小の工場が群集していた東京南部(大田区、品川区、港区)で、雨後のたけのこのように生まれた詩やうたごえなどさまざまな労働者を中心としたサークル文化運動の研究。道場さんは関係者への聞き取りや資料の掘り起こしを続け、実態を明らかにした。

 道場さんと親しかった「現代思想」元編集長の池上善彦さんは道場さんの仕事ぶりを「一つ一つの運動を一方に偏ることなくリアルに再現した」と評価し「封印されていた五〇年代を掘り起こして歴史に位置付け、最初にサークル運動を起こした当時の共産党の役割をプラスもマイナスも正しく評価した」と語る。

 「うたごえ…」は全六巻で、まず一〜三巻が刊行され、来年六月に四〜六巻を出す予定。道場さんは解説も担当している。「『サークルの時代』を読む−戦後文化運動研究への招待」(影書房)は、道場さんら文化運動など全国の研究者の成果をまとめた。「共同研究 思想の科学とサークルの戦後史」(有志舎)が出版に向けて編集中だ。

 偲ぶ会は一月九日に東京都千代田区猿楽町二の在日本韓国YMCAアジア青少年センターで。問い合わせは、みすず書房(後略)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201612/CK2016122402000152.html