機密漏洩の話

渡邉正裕*1電通、NHK取材に「自浄能力がない」と感想を述べた若手社員を「戒告」の懲戒処分にして自浄能力のなさを改めて示す」http://www.mynewsjapan.com/reports/2294
籏智広太*2「「顔出し」で電通を批判した社員 NHKが守れなかった取材源の秘匿」https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/dentsu-nhk


女子スタッフの過労自殺を出した電通労働基準法違反事件の件*3で午前中には厚生労働省強制捜査があり、午後には社長自らのスタッフ向けの「説明会」があった11月7日、電通の或る男性スタッフがNHKの取材に応え、自らの顔を出しながら、「捜索が入ったからと言って急に騒ぎ出すのは自浄能力のない会社だなと思う」という感想を述べ、その映像は午後7時のニュースで使われ、オンエアされた。しかし、その後のニュースではその場面は使われず、ウェブサイトからも削除された。本人からの申し出があったのだという。話はそれだけに止まらず、彼はそのコメントのせいで「戒告」処分を受け、「始末書」を書かされていたという。この件に関して、インフォーマントを守るために「取材源の秘匿」を講じなかったNHKが批判されている。まあそうなんだけれど、この件で最も悪いのはトンデモ処分をした電通だということを忘れてはならない。「説明会」の中で石井直電通社長は「ご自分の考えを述べることはもちろん構わないが、社内の情報を外に出すことは、明確な社規違反です」と述べていたという。この男性スタッフのしたことは「ご自分の考えを述べること」であって、「社内の情報を外に出すこと」ではないだろうか。前者が処分の口実になったとすれば、この石井というオヤジは毛沢東並みの極悪人だということになる。毛沢東は先ず共産党に対する批判も大歓迎ですよと煽っておいて(百花斉放)、次いで批判者たちを「右派」として粛清したのだった(反右派闘争)。もし後者、つまり企業機密の漏洩だったら、状況はかつての中国よりもかつての蘇聯に近くなってくるね。或る男がモスクワの赤の広場でブレジネフは馬鹿だ! と叫んだら警察に連行されたが、罪名は故国家機密漏洩罪だった。これはけっこう有名なジョークだった筈だけど。