操られれ・操る(メモ)

白石明彦「「死の棘」の闘い 島尾ミホ評伝 梯久美子「狂うひと」」http://book.asahi.com/booknews/update/2016111800005.html


梯久美子『狂うひと』、島尾敏雄*1の妻、島尾ミホの評伝が上梓されたという。でも、3kを超える本というのはちょっと敷居が高いか。
少しメモ。


ミホへのインタビューは4回。島尾夫妻の長男で写真家の伸三さんが「きれいごとにはしないでくださいね」と資料を提供してくれた。敏雄とミホの愛の物語は、思想家の吉本隆明や文芸評論家の奥野健男らが唱えた、島を守りに来た武人と無垢(むく)な巫女(みこ)の聖なる出会いという美しく神話的な構図で長くとらえられてきた。梯さんは異を唱えて、新たな夫婦像を示す。

 島尾と親しかった俳人の故真鍋呉夫は「妻の反応を観察して小説にするため、日記をわざと読ませたのかもしれない」と証言してくれた。島尾は小説のためならそれくらいする男だと。

 ミホは日記の「たった十七文字の言葉」を見て気がおかしくなり、「私は、けものになりました」と梯さんに明かした。

 梯さんは「ミホさんの心は17文字の言葉で決定的に傷つけられ、島尾は17文字と釣りあう重さの言葉を妻に捧げるために、『死の棘』を書かねばなりませんでした。妻はそれ以後、書かれることで夫を支配するようになったのです」と考える。

死の棘 (新潮文庫)

死の棘 (新潮文庫)