「炎上」を求めて

承前*1

吉野太一郎「「私は社会に訴える」宇都宮爆発の容疑者?がネットで訴えた、追い詰められた心境」http://www.huffingtonpost.jp/2016/10/23/utsunomiya-explosion-suspected_n_12614402.html


宇都宮自爆事件の栗原敏勝中佐だが、72歳にして、blogもTwitterYouTubeもやっていたITリテラシーの高さを先ず褒めてあげるべきだろう。
さて、退役後にお嬢様の精神病が発症し、それを契機に連れ合いとの関係が悪化し、内戦状態になって、和平は叶わず、遂には離婚へ。その絶望のあまり、全てを擲げちゃって、3名を巻き込む自爆へと至ったのかと思ったのだが、この記事を読んでいると、それはちょっとずれているんじゃないかと思ったのだ。たしかに、中佐は(少なくとも主観的には)地獄の如き酷い経験をした。しかし、それは謂わば峠を越したといえるだろう。いちばん底にいたのは数年前のこと。中佐の世界が崩れた元凶だったお嬢様は既に別居した。敵であった連れ合いとも引き離された。それによって、いちばん底の経験を愚痴のネタとして利用できるくらいの余裕を取り戻した。勿論だからこそ危なかったということはいえるのかも知れない。鬱病において恢復期がいちばん危険であるように。
中佐は、自爆するちょっと前に「ネット炎上を期待しているのですが、訪問者さえ少なく、色々と工夫しております」とblogに書いたという。「ネット炎上を期待して」自宅と自らの身体を「炎上」させてしまったわけだが、一生懸命書いているのに反応が鈍すぎなんじゃないかという焦りは理解できる。でも、「Twitterのフォロワー」が「10月24日午前の段階で約300人」というのは、けっこう注目されているということなのでは? また、この「約300人」は自爆に対して〈煽り〉の効果をもったのか、〈鎮め〉の効果をもっていたのか、それとも中佐には何も影響を与えぬ純粋な傍観者だったのだろうか。