カーヴァー『ぼくが電話をかけている場所』

レイモンド・カーヴァー『ぼくが電話をかけている場所』(村上春樹訳)*1を数日前に読了。


ダンスしないか?
出かけるって女たちに言ってくるよ
大聖堂
菓子袋
あなたはお医者さま?
ぼくが電話をかけている場所
足もとに流れる深い川
何もかが彼にくっついていた


訳者あとがき

どの短篇にも何というか、他人と関係する際のぎすぎす感みたいなものを感じたのだが、訳者の村上春樹氏は以下のように述べている;

内容についてはとくに説明の必要もないと思う。読んでいただいたままの世界であり、読んでいただいたままの内容である。人間存在の有する本質的な孤独と、それが他者とかかわりあおうとする際(あるいは他者とかかわりあうまいとする際)に生じる暴力性が重要なモチーフとなっており、西海岸北部の奇妙に粗い風土(ケン・キージーオレゴン*2出身だ)とこわばりついてしまったような中産階級の風景が舞台として選ばれている。日本においてそれに相応するシチュエーションはちょっと思いつかない。たぶん日本における中産階級がまだそこまでこわばりついた存在ではないからだと思うが、そういう意味ではカーヴァーのこのような短篇群はひとつの予感として読みとっていただけるのではないだろうか?(「訳者あとがき」、pp.198-199)

*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160923/1474602041

*2:カーヴァーはオレゴン州クラッカニーに生まれである(p.193)。