Oliver Sacks on Nietzsche

オリヴァー・サックス*1『音楽嗜好症』からメモ。


ニーチェは生涯をとおして、音楽をはじめとする芸術と生理学の関係に、強い関心を抱いていた。そして「強壮」効果――とくに生理的・心理的な機能低下の状態にあるとき、神経系全般を刺激する力――について語っている(彼自身がひどい片頭痛によって、よく生理的・心理的機能が低下した)。
彼は音楽の「力学的」な力、あるいは推進する力――動きを引き出し、推し進め、調節する力――についても語っている。リズムは動きの流れ(そして、彼が純粋な筋肉の動きと同じくらい力学や運動が関係すると考えていた。感情と思考の流れ)を推進し、統合することができる、とニーチェは感じていた。そしてリズミカルな生気と活力は、ダンスという形に最も自然に表現されると考えた。彼は自分の哲学的思索を「ダンスの連鎖」と呼び、ビゼーの非常にリズミカルな音楽がこれにぴったりだと考え、よくビゼーのコンサートにノートを持っていったものだ。そして「ビゼーは私を優れた哲学者にする」と述べている。(p.373)