行列の理由?

承前*1

伊藤大地*2「おいおい5時間並ぶのかよ。「若冲展」はなぜあんなに混雑したのか」https://www.buzzfeed.com/daichi/why-jakuchu


「美術史に詳しい」という佐藤晃子さん*3へのインタヴュー。
何故、『若冲展』に観衆が殺到したのか。それは端的に「1カ月という短い会期」だったからだという。しかし、いくら会期が短くても伊藤若冲が全くマイナーな存在だったら、何時間も行列なんてことは起こりえない。何故、若冲の人気は迫り上がってきたのか。


――なぜ今、若冲がこんなに注目されたんでしょうか。

色鮮やかさでしょう。若冲が生活に不自由しない家の生まれだったので、最高の絵の具を使っているんです。だから、現代の私たちも、あたかも昨日描いたように見える。古いものだからありがたいんではない、今ここにある素晴らしいものとして、現代美術、ポップアートのようなものとして見てるんだと思うんです。

――若冲の独自性は?

「知る人ぞ知る」画家で、専門家は若冲のことを知っていましたが、一般層にまで有名な存在ではありませんでした。

だんだんと人気が高まっていったのは、1970年前後から。辻惟雄先生が『奇想の系譜』という本で若冲をとりあげたのも、その頃です。2000年に開催された京都国立博物館若冲展で、ブームになりました。インターネットが普及した時期と重なったことも大きいでしょうね。

18世紀、江戸時代中期頃にもなると、経済的に余裕があり、教養豊かな人々が増えました。京都、大坂の上方と、江戸という東西の大都市圏で、腕が立つ画家たちが活躍するようになりました。

若冲は時代を超越していた」という言い方をされることもありますが、実態は当時の京都の絵描きの中で、個性派の一人といったところでしょう。

裕福な町人の家に生まれた若冲は、本格的に画家になっても、基本的に生活のために絵を描く必要がなかった。

だから、狩野派や土佐派の画家とは違い、流派の枠内で縛られることがなく、さまざまな絵画のジャンルから学び、自らの画風を形作ることができたんです。既成の流派とは違う、どことなくユーモラスな画風が現代の人の心を惹き付けるのでは。