唐津vs. 下関

中尾友昭って昨年は下関市立大学で「修士論文」を撥ねられて大いに憤っていたらしいのだが*1、今度は佐賀県に喧嘩を売っているらしいのだ。
朝日新聞』の記事;


フグ肝の食用、山口・下関市長「邪道」 解禁論に反発

上山崎雅泰

2016年5月30日23時02分

 天然トラフグの取扱量日本一を誇る山口県下関市の中尾友昭市長は30日の記者会見で、猛毒による食中毒の恐れがある「フグ肝」の食用解禁を佐賀県が国に求めていることについて、「(フグの)食文化から言っても邪道だ。もし認められれば『肝臓を食べても大丈夫』という誤った認識が世間に広がりかねない」と反発した。


 佐賀県は「毒のないトラフグの肝臓を提供できる」とする同県唐津市水産業者の依頼を受け、養殖フグの肝の食用を限定的に認めるよう厚生労働省に申請。業界団体が一斉に反発する事態になっている。

 ふぐ処理師の免許を持つ中尾市長は「毒の仕組みは解明されていない。万が一事故が起きた場合は下関ふく(フグ)のイメージダウン、風評被害にもつながりかねない」と批判した。

 フグの毒は青酸カリの1千倍とも言われる猛毒テトロドトキシン。肝などの内臓や、一部は皮や筋肉にも含まれている。調理するには免許が必要で、厳しく制限されている。(上山崎雅泰)
http://www.asahi.com/articles/ASJ5Z52YWJ5ZTZNB00Q.html

彼は「ふぐ処理師の免許を持つ」唯一の政治家というわけか。なお、彼の意見は厚生労働省のこれまでの意見と基本的に同じ。なお、河豚料理屋の団体である「全国ふぐ連盟」は「肝」解禁に反対している*2。問題は先ず、食物連鎖による毒の蓄積というこれまでの生物学的研究の結論をどう評価するのかということだろう。また、「無毒」の河豚の養殖技術は既に特許を取得しているわけだが*3、このことはどう評価するのか。
天然対養殖の争いという側面もないことはないとは思う。下関といえば天然の河豚。もし養殖の「肝」が解禁された場合、「肝」を食べられない天然は何をアピールしていくのか。

*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150310/1426005115 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150317/1426617578

*2:See 菅原普、東郷隆「フグ肝、食べられる?解禁論争 過去10年で10人死亡」http://www.asahi.com/articles/ASJ5S76W3J5SUTIL059.html

*3:See 「毒を持たない小川のとらふぐ」http://www.fugunoogawa.co.jp/swellfish.html 日本水産学会「毒のないフグをつくる」http://www.miyagi.kopas.co.jp/JSFS/JSFS-kids/daigaku6.html Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160401/1459516867