予告された殺人未遂の記録

承前*1

これを書いている時点で「殺人未遂」状態がまだ続いているなら(不幸中の)幸い。

毎日新聞』の記事;


アイドル刺傷
母、京都府警に電話…「執拗に嫌がらせ」

毎日新聞2016年5月23日 11時44分(最終更新 5月23日 13時10分)


容疑者の自宅管轄
 東京都小金井市で大学生の冨田真由さん(20)が刃物で刺され意識不明の重体となっている事件で、冨田さんの母親が今月4日、職業不詳、岩埼(いわざき)友宏容疑者(27)=傷害容疑で逮捕=の自宅がある京都市内の警察署に電話し、「娘が嫌がらせを受けている」と相談していたことが京都府警などへの取材でわかった。

 京都府警によると、冨田さんの母親は4日午前6時過ぎ、別の用件で訪れていた京都駅から電話し、岩埼容疑者の自宅がある地域を管轄する右京署に「娘がブログやツイッター右京区に住む男に執拗(しつよう)な嫌がらせを受けている」と相談した。電話の時間は約6分間で、応対した警察官は警視庁に相談するよう伝えたという。

 京都府警はこの対応について、「男の名前や住所などの情報がなかった。娘さんが東京にいるなら、嫌がらせの証拠を持って警視庁に行くほうがいいと伝えた。適切な対応だった」としている。

 冨田さんは6日、知人を通じて警視庁武蔵野署に「相談したい」と電話で伝え、9日に知人と同署を訪問。岩埼容疑者からのツイッターやブログへの書き込みをやめさせてほしいと相談していた。

 警視庁は23日、岩埼容疑者を殺人未遂と銃刀法違反の容疑で東京地検に送検し、京都市右京区の自宅を家宅捜索した。逮捕後、「殺すつもりだった」と供述したことから容疑を切り替えた。【鈴木理之、神保圭作】
http://mainichi.jp/articles/20160523/k00/00e/040/155000c

『日刊スポーツ』の記事;

冨田さん警察に相談…ツイッターに「君も死ぬ」

日刊スポーツ 5月22日(日)10時3分配信


 アイドルとして活動し、都内私立大学に通学する冨田真由さん(20=武蔵野市)が21日午後5時すぎ、東京都小金井市のイベント会場でファンの男に首や胸、背中、両腕など全身20カ所以上を刺された。病院に運ばれたが、意識不明の重体で心肺停止の状態。警視庁小金井署は、傷害の疑いで住所職業不詳、自称岩崎友宏容疑者(27)を現行犯逮捕した。冨田さんは、同容疑者からツイッターで誹謗(ひぼう)中傷の書き込みをされており、武蔵野署に相談していた。

 警視庁によると、冨田さんは5月に武蔵野署に、岩崎容疑者の名を挙げて「ツイッターに執拗(しつよう)に書き込みをしている」と相談していた。冨田さんのツイッターアカウントには、同容疑者のものとみられるアカウントから1日に何件も書き込みがあった。京都在住で、2年前に冨田さんを知ったと書き込まれている。4月16日には「君も僕もいつか死ぬんだよ。死んでしまうんだよ。大事に生きなきゃね」、同19日に「『死にたい』って言ったらあなたは『死ねば』って言ってくれますか」と書き込んでいた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160522-00000057-nksports-soci&pos=3

J-CASTニュース』の記事;


女子大生アイドル刺傷、容疑者がブログで「犯行示唆」? 事件5分前には「まだかなまだかな〜」
2016/5/22 13:12


歌手やアイドルとしての活動をしていた大学生の冨田真由さん(20)が首や胸など20か所以上を刺されて重体となっている事件で、傷害容疑で現行犯逮捕された自称・岩埼友宏容疑者(27)のものとみられるブログが、ネット上で大きな関心を呼んでいる。

「あいつ死ねばいいのに」「殺したい、殺したい、殺したい」「犯罪します」――。このブログには、今回の犯行を示唆するような投稿が数多く見つかり、最後の更新は、冨田さんが襲われる5分前に行われた。そこには、「まだかなまだかな〜」という言葉が残されていた。

「悪意と敵意には敏感であった方がいいよ」

各メディアの報道によると、事件は2016年5月22日午後5時5分頃、東京都小金井市の雑居ビルの前で起きた。当日は、ビル内のライブハウスでアイドルなどが出演するライブイベントが午後7時から開催予定だった。出演者の1人だった冨田さんは、地下1階の会場につながる階段付近から会場入りする際に、岩埼容疑者に刺されたとみられる。

首や胸など20か所以上を刺された冨田さんは、病院に運ばれたが、22日12時現在、意識不明の重体で心肺停止の状態となっている。

冨田さんは長野県出身で、過去に期間限定のアイドルユニットで活動。特撮ドラマ「仮面ライダー フォーゼ」やテレビCMへの出演歴もある。最近はシンガー・ソング・ライターとして活動していたという。

岩埼容疑者は、警察の取り調べに「冨田さんのファンだった」「プレゼントを贈ったが送り返された」などと供述しているほか、本人のものとみられるツイッターを見ても、冨田さんに対して執拗なリプライ(返答)を送っていたことも確認できる。岩埼容疑者は1月18日から約4か月の間に、400件以上のメッセージを冨田さんに送っていた。

その内容をみると、冨田さんに対して攻撃的な言葉が目立つ。「誠意が足りないような気がする」「ファンを大事にしない人間なんだね」などと自分に対する態度を批判するもののほか、「悪意と敵意には敏感であった方がいいよ」といった忠告ともとれるメッセージも送っていた。

こうした岩埼容疑者の異常ともいえる行動について、冨田さんは4月9日に武蔵野署を訪れ、「(容疑者から)ブログやツイッターに執拗に書き込みを受けている」などとも相談していたという。


「僕は殺したい」「犯罪します」

岩埼容疑者はツイッターだけでなく、自身のブログでも冨田さんに対する「偏愛ぶり」を露わにしていたようだ。

『惨めさの中で世界を笑う』とのタイトルがつけられたブログがあり、15年2月頃から冨田さんの名前がたびたび登場する。15年4月には、「やっぱり嫌いだ」「死にたくなった」など冨田さんに向けたメッセージをつづっている。事件後、その内容が岩埼容疑者のツイッターの内容と連動していることなどから、同一人物のブログの可能性が高いとして注目を集めることになった。

ブログの内容は、16年4月頃から徐々にエスカレート。冨田さんの写真をアップロードし「気持ち悪いよねー」とのコメントをつけた投稿のほか、「あいつ死ねばいいのに」「殺したい、殺したい、殺したい」「犯罪します」といった過激な言葉が頻出していた。

さらに事件前日の5月20日には、


「殺人なんてのは何世紀も前から毎日毎日飽きずに懲りずに世界中のあちらこちらで何十何百件も起こっているアリキタリナ愚行。加害者になるのも被害者になるのも生きていれば遭遇する可能性は十分ある。恐いね(笑)」

などと犯行を示唆するような文章もあった。

さらに事件当日の朝には、「人を何らかの行動に駆り立てるのはたいていの場合、意欲などではなく羞恥だ」とのタイトルの文章を更新。本文には一言、「行ってきます!」とだけつづった。その後、事件の起きる5分前となる21日17時には、「まだかなまだかな〜」との一文も投稿していた。

犯行直前まで更新が続いていた岩埼容疑者のブログについて、ツイッターネット掲示板などでは、


「怖すぎる・・・」
「(ブログの段階で)警察が介入しなきゃいけなかったんじゃないか」


といった声が出ている。
http://www.j-cast.com/2016/05/22267455.html?p=all

産経新聞』の記事;

【アイドル女性刺傷】逮捕の男「事件当日に新幹線で上京」 計画的犯行か

2016年5月23日 20時50分

産経新聞


 東京都小金井市で、アイドル活動をしていた亜細亜大3年、冨田真由さん(20)が刺されて重体になっている事件で、傷害容疑で逮捕された岩埼(いわざき)友宏容疑者(27)が「事件当日、冨田さんと会うために京都から新幹線で上京した」と供述していることが23日、捜査関係者への取材で分かった。

 岩埼容疑者は「2〜3時間、(現場の最寄り駅付近で)待ち伏せをしていた」とも供述。警視庁小金井署は計画的に冨田さんを襲ったとみて経緯を調べる。

 同署は、岩埼容疑者が京都市右京区太秦中筋町のマンション在住で、造園業に就いていたことを確認。23日、マンションを家宅捜索した。岩埼容疑者が冨田さんにプレゼントし、送り返されたものとみられる腕時計などを押収した。

 捜査関係者によると、岩埼容疑者とみられる人物が4月下旬ごろから、冨田さんと舞台で共演経験がある女優のツイッターに「冨田真由に、送った贈り物を全て返すように伝えて」などとも書き込んでいた。この時期、冨田さん側からやりとりを拒絶する「ブロック」をされていたことから、別の女優に不満をぶつけていたみられる。

 その後、冨田さんの母親が今月4日、京都府警に「娘が嫌がらせを受けている」と相談。府警は「警視庁に相談してください」と伝えたという。

 同署は23日、殺人未遂と銃刀法違反の疑いで岩埼容疑者を送検した。
http://news.livedoor.com/article/detail/11555565/

今回の岩埼友宏*2による「殺人未遂」劇は岩埼によってあからさまに予告されていたものであるが、被害者(やその家族)の側は何かが起こるんじゃないかと恐れてはいたものの、まさかこんなしゃれにもならないことが起きるとは思ってもみなかったということだろうか。警察側の認識も。
事件を巡る報道などを取り敢えずチェック(タイトルのみ);


ガン・クリスティーナ、黒川晋史「<アイドル刺傷>ネット上、回復祈る声」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160523-00000004-mai-soci
冨田真由さん重体 同じグループで活動していた橋本楓Twitterで胸中語る」http://news.livedoor.com/article/detail/11551100/
Justin McCurryin “Japanese pop star in critical condition after knife attack by fan” http://www.theguardian.com/world/2016/may/23/japan-pop-star-knife-attack-fan
Euan McKirdy “Japanese pop star in critical condition after fan stabs her multiple times” http://edition.cnn.com/2016/05/23/asia/japan-pop-star-stabbing/
“Japanese pop star in critical condition after knife attack by fan” http://www.bbc.com/news/world-asia-36352495


『ガーディアン』もCNNもBBCも2014年の岩手県滝沢市でのAKB48襲撃事件に言及している;


Agence France-Presse “Japanese girl band AKB48 attacked with a saw at fan event” http://www.theguardian.com/world/2014/may/26/japanese-girl-band-members-attacked-saw-fan-event
“Japan girl group AKB48 attacked by man with saw” http://www.bbc.com/news/world-asia-27572723
“Man jailed for attacking Japan's AKB48 girl band” http://www.bbc.com/news/world-asia-31372548


タイトルはガブリエル・ガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録*3から。

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

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