五十嵐 on 『あの日』

五十嵐太郎*1「ポエムと推理、キメラ的複合」http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2016031300006.html


小保方晴子『あの日』*2の書評。
曰く、


大きな特徴は、異なるタイプの文章が交ざっていることだ。例えば、細胞の研究を説明するための科学入門書的な解説、ラットへの「頑張ってくれて、ありがとう」や、「この子たち(=緑に光る細胞塊)に会えてよかった」といったリケジョ的なポエム、そして誰が黒幕で犯人なのかという推理小説などである。通常、出会わないはずの要素が、まさにキメラ的に複合することによって、ユニークな文章が出現している。

いわば、まわりの大人たちに振り回されながら、その期待に応えようとして、本人は一生懸命頑張る涙と根性の物語である。研究者の複雑な人間関係、主人公が女性であるがゆえの周囲の特別視といった側面からも読めるだろう。あえてジャンル名を与えるとすれば「少女サイエンス“ノン”フィクション」とでも呼ぶべきか。あまり読んだことがなく、だからこそ面白い。が、これが現実とリンクしていることが最大の驚きだ。