「絶滅」していたのか

朝日新聞』の記事;


ニホンカワウソは日本固有種の可能性 米科学誌に論文

中山由美

2016年2月29日08時26分

 絶滅したとされるニホンカワウソは日本の固有種だった可能性が高いとの研究結果を、東京農業大国立極地研究所などのグループがまとめた。これまではユーラシアカワウソの亜種とみられていたが「約130万年前に分化し、日本で独自に進化した」と判断。米科学誌プロスワン(電子版)に論文を発表した。

 ニホンカワウソは北海道から本州、四国に広く生息したが、毛皮目当ての乱獲や水質汚染などで次第に姿を消した。1979年に高知県須崎市で目撃されたのを最後に生息は確認されず、環境省は2012年、絶滅種に指定した。

 研究グループは、1977年に高知県大月町で捕獲されたニホンカワウソの剝製(はくせい)から前脚の肉球を約0・01グラム削り取り、DNAを解析。その結果、中国やロシア、韓国に生息するユーラシアカワウソとは違う種類で、約130万年前に分化していたことがわかったという。東京農業大野生動物学研究室の佐々木剛(たけし)教授は「かつて陸続きだった大陸から渡り、日本列島で独自の進化を遂げたのではないか。日本固有種または固有亜種だったと言える」と話す。

 研究グループは2012年の日本哺乳類学会で、神奈川県・三浦半島の南の城ケ島で1915年ごろに捕獲され、襟巻きにされたニホンカワウソの肉片を分析し「大陸のカワウソの一部かもしれない」と報告していた。これについて佐々木教授は「このカワウソが外来種だったか、国内にユーラシアカワウソの亜種と日本の固有種の両方がいた可能性がある」とみている。

 絶滅した生物のDNAは長い年月がたって変性し、これまでは遺伝子解析が難しかった。今回は、ばらばらになったDNAを大量に読み取る技術で塩基配列をつなぎ合わせ、約1万5千の塩基を調べることに成功。極地研の瀬川高弘特任助教は「絶滅した古代生物の遺伝情報も明らかにできる」と話している。

 ニホンカワウソ環境省レッドリストで「ユーラシアカワウソの日本本土亜種と北海道亜種」とされた上で、「形態的・遺伝的特徴から別種とするという意見もある」との説明が添えられている。(中山由美
http://www.asahi.com/articles/ASJ2C577SJ2CUTIL017.html

最近言及したヨーロッパ最古のムスリムの墓に関する研究も『プロス・ワン』*1に掲載されたのだった*2。それで、幾つか考えられる鍵言葉を入れて検索してみたのだけれど、この論文には辿り着けなかった(orz)。まあ『プロス・ワン』で最も人気が高い論文には、


David Robert Grimes “On the Viability of Conspiratorial Beliefs” http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0147905
陰謀理論の妥当性(陰謀の成功可能性)について

Nicole Prause,Jaymie Park,Shannon Leung, & Geoffrey Miller “Women's Preferences for Penis Size: A New Research Method Using Selection among 3D Models” http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0133079
女性はどんなサイズのペニスを好むのか。3Dモデルを使った研究。


があるということはわかったけれど。
川獺に話を戻す。佐々木剛氏は「国内にユーラシアカワウソの亜種と日本の固有種の両方がいた可能性がある」という。これは十分にあり得ることだと思う。いくら130万年前にユーラシアカワウソから分岐したといっても、日本列島がユーラシアから切り離され、日本海が湖から海になるのはさらに先の話だからだ。その間に、ユーラシアカワウソが列島にやってきたとしても不思議ではない。
さて、「絶滅したとされる」という。俺も既に「絶滅」していたのかと一瞬驚いた。
2012年8月の『ジャパン・タイムズ』(共同通信)の記事;


Japanese river otter declared extinct

Kyodo

Aug 29, 2012

The Japanese river otter has been designated as extinct now that none has been seen for more than 30 years, according to a report released Tuesday by the Environment Ministry.

Long categorized as an endangered species, the river otter is the first mammal to be declared extinct since the ministry started compiling such data in 1991.

The last one was spotted in Susaki, Kochi Prefecture, in 1979.

The Asiatic black bear, a regionally endangered species, has also been declared extinct in Kyushu.

The otters, which when fully grown measured about 1 meter long, lived on fish and shrimp.

They were found across the nation before the war but started to decline as many were hunted for their fur and as their habitats became polluted.
http://www.japantimes.co.jp/news/2012/08/29/news/japanese-river-otter-declared-extinct/

環境省の基準では、「30年に亙って目撃されない」ことが鍵となるわけか。ただ、「絶滅」認定以降、「目撃」情報が複数寄せられているという*3ニホンオオカミがまだ生存しているという人もいまだにいるわけだけれど、これも未確認生物といっていいのだろうか。
ニホンカワウソが最後に目撃された須崎市新荘川については、


ニホンカワウソが最後に発見された川 新荘川http://www.mantentosa.com/sightseeing/susaki/try/shinjo_river/index.html


をマークしておく。

*1:http://www.plosone.org/

*2:Yves Gleize,Fanny Mendisco,Marie-Hélène Pemonge,Christophe Hubert,Alexis Groppi,Bertrand Houix,Marie-France Deguilloux,& Jean-Yves Breuil “Early Medieval Muslim Graves in France: First Archaeological, Anthropological and Palaeogenomic Evidence” http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0148583 Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160226/1456456273

*3:See herenzuri「絶滅種のニホンカワウソ、まだ生きている!?」http://matome.naver.jp/odai/2135780464951441901