From speech to action

韓東賢「悪質な「7月9日在日強制送還デマ」で、扇動した者たちと扇動された者たち、そして温床となった入管行政」http://bylines.news.yahoo.co.jp/hantonghyon/20150709-00047393/


いや知らなかった。自分の世間知らずぶりも窮まった感じだな。


今これを書いている本日は7月9日。数か月ほど前から、この日を「期日」に在日コリアン在留資格を失うというデマがTwitterを中心としたネット上で出回り始めた。多少のバリエーションや尾ひれはあるが、本日をもって在日コリアンが「不法滞在」となるので入管に通報すれば「強制送還」されるとされ、日頃から在日コリアンに対して「国へ帰れ」と連呼している排外主義者たちが「通報」を呼びかけていた。個人情報を含む「通報リスト」なるものまで存在し、実際に本日現在、入管サイトの情報受付フォーム*1や電話による「通報」が相次いでおり、入管サイトのサーバがダウンしたという情報もある。

このデマのおおもとになっているのは、2012年7月から実施されている新たな在留外国人管理制度*2だ。入管法と外登法の二本立てだった外国人管理制度から外登法が廃止され、日本人住民に関する事項のみを住民基本台帳に記載していた住基法が外国人にも適用されることになった(この制度変更そのものの是非について、とりあえずここでは問わない)。これにともない在日コリアンなど、歴史的経緯と関連する「特別永住」の在留資格を持つ者については、「外国人登録証明書」から「特別永住者証明書」への切替が行われている*3。デマは、その一部の期限が今年7月8日であることを「根拠」にしているようだが、在留資格には何の変更もなく、意図的な曲解どころか事実無根の悪質なデマだとしか言いようがない。

さらに、

作家の中沢けいさんはTwitterで今回のデマの悪質さについて、「これまで『ザイニチ』とレッテルを張る(言うだけ)だったものが『通報』という行為を促す点にある。狂信者に行為を促すという点で、ヘイトクライムへの距離を大きく縮めた質的変化を伴っている」「デマによるデモや街宣などの集団的な行動よりも『個別の行為の扇動』のたちの悪さは突発的な事件を誘発する可能性が高いところにある」と指摘する。実際に入管にメールや電話で「通報」した者たちの存在は、私に関東大震災後に起きた朝鮮人虐殺*4を思い起こさせた。
日本におけるヘイト・スピーチはこれによって新たなステージにアップグレイドされたといえるだろう。スピーチからアクション(行為)へ。というか、ここではスピーチ(デマ)は教唆という仕方で行為(ここでは虚偽のタレコミ)と癒合してしまっている。ヘイト・スピーチにはスピーチで対抗することができる。しかし、行為にスピーチで対抗することは困難だろう。
最初に、自分が世間知らずだといったのだが、主要なメディア、例えば朝読毎に代表される全国紙や全国ネットのTVはこのデマとそれに煽動されたタレコミの殺到という事態を伝え、論評したのだろうか。