『スポーツ報知』の記事;
「再発防止に取り組む 」ために「「対策本部」を立ち上げ」るということなのだけど、 大阪商業大学も学術機関の端くれであるなら、〈臭いものに蓋〉的な、或いは世間の目に配慮しただけの「処分」でお茶を濁すのではなく、その犯罪現場において如何なる社会=心理的メカニズムが作動していたのかを、何よりも検証すべきだろう。例えば、ジンバルドーの「スタンフォード監獄実験(SPE)」などを参照しつつ(See Philip Zimbardo The Lucifer Effect*1)。
ライターであぶる、全裸に落書き、肛門に竹串…大商大日本拳法部で暴行
スポーツ報知 5月11日(月)7時3分配信合宿中、当時1年生の男子部員(19)を全裸にして全身に落書きし、肛門に竹串を刺したり、集団で暴行を加えたとして、大阪府警捜査1課は10日、強要や傷害の疑いなどで、大阪商業大(東大阪市)日本拳法部の元主将・矢田秀人容疑者(21)=大阪市浪速区=ら3人を逮捕した。矢田容疑者は「日頃から生意気なのでやった」と容疑を認めている。暴行は3月6〜8日にわたり行われ、3人は無期停学処分を受けている。
3月4〜8日に大学内の施設で行われた名門日本拳法部の合宿中に、壮絶な集団リンチが行われていた。
府警捜査1課は10日、強要や傷害などの疑いで矢田容疑者ら2人を、傷害と暴力行為法違反の疑いで元部員の井上直也容疑者(20)=奈良県大和高田市=を逮捕した。
大阪府警によると、19歳部員が最初に暴行を受けたのは6日。午後7時ごろから約2時間、浴室で矢田容疑者らに首を絞められ、水を張った浴槽に顔を押しつけられるなどの暴行を受けた。
翌7日に行われた暴行はエスカレートした。午後10時ごろ、矢田容疑者ら3人のほかに4人の部員が「合宿の打ち上げ」と称し、ウイスキーなどアルコールを飲んでいた。呼び出された19歳部員は、部員らに頭突きをされ、殴られた。矢田容疑者らは酒の一気飲みや全裸になることを強要、全身に落書きし、背中をライターであぶった。
さらに、肛門に竹串を刺し、19歳部員の陰茎を他の部員に押しつけるなどした。笑いながら見ていたり、携帯電話で写真を撮る部員もいたという。暴行は6時間後の8日午前4時ごろまで続いた。
3月10日に、19歳部員は父とともに近くの警察署に被害届を出し、発覚。部員は目の付近に全治1週間の打撲、眼球にもけがを負った。
捜査1課によると、矢田容疑者は「日ごろから生意気で、下の者に示しがつかないと思った」と容疑を認めている。井上容疑者は「ライターであぶったことは覚えていない」と一部否認している。別の21歳と19歳の部員についても任意で捜査している。
大商大は4月1日付で、矢田容疑者ら3人を無期停学、1人を停学3か月、3人を訓告の処分に、同部を無期限の活動停止処分とした。7人は、現在も大学に在籍している。しかし、大学はこの日の3人の逮捕を受け「誠に遺憾。再発防止に取り組む」とコメント。11日に「対策本部」を立ち上げ、当該部員らの処分などについて改めて検討するという。
大学によると、同部は1951年に創部し、昨年の全日本学生選手権の男子団体で準優勝した強豪。かつて優勝したこともあるという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150510-00000231-sph-soci
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こうした性=暴力が最も目立った仕方で且つおぞましい仕方で顕現するのは恐らく戦争においてであろう。戦争と兵士によるレイプは切っても切り離せない。それはたんに兵士の性的欲求不満の問題とかでなく、別の仕方での戦争の表現と捉えるべきなのだろう。そこでは、「大阪商業大」と似た社会=心理的メカニズムが作動するのだろう。如何にして、そうしたメカニズムから逃れるのか。「対策本部」にはそういうところまで考察を拡げてもらいたい。
ところで、『朝日』の記事;
「抑圧の移譲」(丸山眞男)。妻が死亡、夫に傷害容疑 原発事故避難で近隣トラブルも
2015年5月11日10時46分
福島県警相馬署は、妻にけがをさせたとして相馬市新沼の無職斎藤敏明容疑者(72)を傷害の疑いで9日深夜、緊急逮捕し、10日発表した。妻は搬送先の病院で死亡が確認されたため、県警は11日に遺体を司法解剖して死因を特定し、容疑を傷害致死に切り替えることを検討している。
同署によると、斎藤容疑者は2日から8日にかけて複数回、妻の悦子さん(66)の顔を殴って踏みつけたり、腹部を蹴ったりしてけがを負わせた疑いがある。
斎藤容疑者は9日午後7時半すぎ、「自宅で妻が意識をなくしている」などと119番通報。駆け付けた救急隊員が、心肺停止状態で倒れていた悦子さんの顔や腹に外傷や皮下出血を見つけ、警察に連絡した。
斎藤容疑者は当時酒に酔っており、妻に暴行を加えたことを認めているという。
■「あのとき止めていれば」
夫婦間の暴力(DV)があった直後とみられる斎藤夫妻の様子を8日夕、近所の人が目撃していた。周囲への取材から、斎藤容疑者が東京電力福島第一原発事故の避難によるストレスで心身に不調をきたし、近隣でのトラブルをへて暴行に及んだ可能性が浮かんだ。
近所の30代の夫婦によると、悦子さんは8日午後6時すぎ、自宅前の路上に倒れていた。「どうしたんですか。こんな所で寝ていたら車にひかれるから」と声をかけると「大丈夫。私なんか……」とふらふらと立ち上がった。直後に斎藤容疑者が現れ、「構うな」と悦子さんを自宅に連れ帰ったという。
悦子さんを助けようとした夫婦は「あのとき強く助けを求めてくれたら、こんなことにならなかったかも」と残念そうに話す。
親族らの話では、斎藤夫妻は南相馬市小高区大富で和牛を飼う畜産農家だった。自宅が原発事故の旧警戒区域に入って避難を強いられ、2013年1月から現在の相馬市内の避難者用借り上げアパートに住む。
斎藤容疑者はその頃から心身の状態が悪化、ふさぎ込んで家にこもりがちな日々が続いた。が、今春からは酒を飲んで出歩く姿も見られるようになった。
5月初めには、同郷の避難者が稲作を再開する相馬市内の水田に行って「俺が教えるやり方でやれ」などと酒の臭いをさせながら言い、知人に連れ戻されたことも。市内の居酒屋では他の客から「避難者は賠償金がいっぱいもらえていい」などと言われて殴り合いとなり、ビール瓶で額と手の甲にけがを負ったという。
その話を本人から聞いた同郷の40代女性は「ふだんはおとなしい人。狭いアパートで農業もできなくなった。その鬱屈(うっくつ)が、交通事故で足が不自由になった悦子さんに向かったのでは」と推測する。
相馬市の診療所で原発事故避難者らの心のケアに携わってきた精神科医の蟻塚亮二医師は「DVやアルコール問題は故郷を奪われ、長期間避難生活を強いられている人たちが抱える典型的なストレス反応だ。避難先での新たな人間関係の確立こそが急務だ」という。(本田雅和)
http://www.asahi.com/articles/ASH5B2DB8H5BUGTB001.html