「時津」など

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140813/1407858885に対して、


江浦正秀 2014/08/13 23:49
はじめまして。通りすがりですが、九州人としては捨て置けません(笑)

[夫木和歌抄]
ときつかせにしふくうみを行船のゆたのたゆたに雲そわかるゝ(柿本人麻呂
時津かせ吹まくゑらすあこの海の朝氣のゑほにたまもかりてな (よみ人知らす)
Googleブックスhttp://books.google.co.jp/books?id=tZvSeXziTQEC&pg=PA319

時津 【日本辞典】 http://www.nihonjiten.com/data/249553.html

こんな感じです。ではでは。
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140813/1407858885#c1407941384

多謝、多謝!
「ときつ」ならぬ「とぎつ」ですが、ご紹介いただいた『日本辞典』の、

とぎつちょう【長崎県


[時津]
長崎市北部と西彼杵半島の接点に位置する町。大村藩に属した地。鎌倉時代には「時津(トギツ)」と呼ばれたという。「時つ(お祝い、うれしいこと、幸せ)」の「つ(「の」の意の格助詞)」が「津(港)」に入れ替わり、「幸せを運んでくれる港」という願いを込めたとする説があり、「トギツ」は「トキツ」の音が変化したとされる。また、大村より見て遠い港とする説もある。
http://www.nihonjiten.com/data/249553.html

時津町のサイトでは町名の由来への言及はないのですが、

時津町の起源は、はっきりはしませんが、鎌倉時代には「時津」と呼ばれていたようです。

 中世の開発時代起源には、荘官あるいは地頭として時津氏一族が活躍し、少なくとも室町時代には大村領に属していたようです。また、大村氏が、中岳城の一戦に敗北して、一時期、有馬氏に領されたこともありました。
http://www.town.togitsu.nagasaki.jp/one_html3/pub/default.aspx?c_id=10
と述べられている*1Wikipediaでも地名の由来への言及なし。「時津氏一族」というのは(日本の苗字の多くがそうであるように)「時津」という土地に住んでいたので「時津」と名乗ったということなのでしょう。多分。
時津風」については、丸山林平『古典通解辞典』に曰く、

ときつかぜ[時つ風] (名)「つ」は「の」に同じ。(1)時節にかなった風。五風十雨、時をたがえない風。謡曲高砂「四海波静かにて、国も治まる時つ風」(2)潮のさして来る時に吹く風。潮時の風。万葉、六の九五八「時つ風吹くべくなりぬ香椎潟潮干の浦に玉藻苅りてな」

ときつかぜ[時津風] (枕詞)前項参照。潮時の風が吹くことから「ふく」に冠する。万葉、十二の三二〇一「時津風吹飯(ふけひ)の浜に出でゐつつ贖(あが)ふ命は妹がためこそ」⇒ふけひのはま。
http://www.umoregi.com/koten/jiten/index.html?ch=%E3%81%A8

『古典通解辞典』に引用された「時津風吹飯(ふけひ)の浜に出でゐつつ贖(あが)ふ命は妹がためこそ」の「吹飯の浜」は和泉国(現在の大阪府泉南郡岬町)の「吹飯浦」*2
さて角力に戻ると、「時津風」はそもそも大阪角力名跡で、18世紀半ばに引退したという時津風弥吉に遡ることができる*3。とはいっても、この初代の弥吉さんについて、出生地その他の情報をネットで探すことはできなかった*4。彼は和泉国の「吹飯浦」に縁があったのか、それとも肥前の「時津」に縁があったのか。