多田智満子『魂の形について』

魂の形について―エッセイの小径 (白水Uブックス)

魂の形について―エッセイの小径 (白水Uブックス)

多田智満子『魂の形について』*1を読了したのは数日前。


1 たま あるいは たましひ
2 何を以て羽翼有るや
3 白鳥 黒鳥
4 漂えるプシュケー
5 オシリスの国
6 ラーの舟
7 蜂蜜あるいはネクタル
8 魂の梯子と計量
9 心臓から蓮華へ


あとがき

冒頭に曰く、

霊魂について語るといっても、もちろん宗教にかかわるわけではなく、また、哲学的な問題に立入るわけでもない。ここで話題となるのは魂そのものではなく、魂の形である。というよりはむしろ、昔から人々が魂なるものを、具体的にどんな形で表象してきたか、ということである。そして具体的にとは、つまり、丸いとか、羽根が生えているとか、あるいは形がなくて風のようだとか、そういう単純な意味だと考えて頂いて差支えない。また、形はおそらく質料*2に対する形相*3の意味であろう、と深読み、あるいは誤解して頂いてもまた一向に差支えない。(p.5)
魂の「表象」について。また、これは死者の「表象」についての省察でもある。「生者の肉体に内在しているかぎり、霊魂は形象として考えにくいし、また、目に見える可能性もありえない」(p.10)。日本的な「玉」(「たま」)としての霊魂、さらには昆虫や鳥などの「羽」のあるものとしての霊魂が語られる。第4章以降、話は希臘や埃及といった古代地中海世界が中心になるが、死者「表象」論という色彩が強くなる。第8章では、古代埃及・希臘を基礎とした基督教やイスラームという中東的一神教が視野に組み込まれ、最後は「心臓」=「蓮華」という仏教・ヒンドゥ的な表象が論じられて、本書は締め括られる*4

多田智満子について;


Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E7%94%B0%E6%99%BA%E6%BA%80%E5%AD%90
「多田智満子」http://homepage3.nifty.com/anti-podes/tada.html
佐藤弓生「私の好きな詩人  多田智満子」http://shiika.sakura.ne.jp/beloved_poet/2012-12-07-12333.html

*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140716/1405495538

*2:「ヒュレー」というルビ。

*3:「モルフェー」というルビ。

*4:ここでは、著者のLSD体験が挟み込まれている。「今を去る十七年もむかしに、私はLSDを服用して、かぎりなく花ひらく一輪の薔薇が私の眼の中に発生するのを視たことがある」(p.172)。