匿名は二重

承前*1

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20140705/1404544225


八田浩輔、須田桃子「STAP論文:12年サイエンス審査時 ES細胞混入指摘」*2という『毎日』の記事を引く。小保方晴子グループは2012年にSTAP論文を米国のScienceに投稿したがリジェクトされた。その際の査読コメントに「ES細胞の混入」を疑うものがあった。その後、グループに笹井芳樹が参加し、Natureへの2度目の投稿では査読を通過した。これが最近「撤回」された当の論文。この経緯を巡って、「笹井芳樹に名前負けしたネイチャーの査読者が、再投稿の論文を通してしまったことに、問題の核心があるといえるだろう」という。「査読」制度について少々誤認があるようなので、申し上げておくと、通常「査読」においては、「査読」する側が匿名になるだけでなく、「査読」される側も匿名化されます。つまり、誰が「査読」しているのかわからないと同時に、誰のを「査読」しているのかもわからないということになる。建前としては。しかし実際には、(共同執筆のため、個性的な文体はかなり均されてしまうとはいえ)それでも文体は個性であるわけだし、先端研究であれば(匿名であっても)A研究所、B大学、C大学のうちのどれか、くらいまでは(全くの門外漢が「査読」をすることはできないので)絞り込み可能である。それでも、共著者に笹井芳樹が加わったかどうかまでは査読者にはわからないのでは? さらに、2012年にScienceで論文を落とした査読者と2013年にNatureで論文を通した査読者が同一人物である可能性もあるよ。「査読」制度の建前と実際のズレを巡っては、例えば福岡伸一生物と無生物のあいだ*3とか。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

ところで、山崎行太郎*4が『毎日』の須田桃子記者を攻撃しまくっているのね*5

なお、「査読」を巡っては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090402/1238648964も参照のこと。