アマゾンのせいではない

佐伯雄大「街中から書店が消える……ニュースに上がるネット書店の影響は大嘘!?」http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131228-00010000-cyzoz-soci


リアル書店の衰退はネット書店のせいという俗説を退ける。
曰く、


中小書店の多くは、雑誌・コミック・文庫が売り上げの3本柱といわれている。売り場が100坪以下になればなるほど、雑誌の売上構成が高くなり(多い店では構成比50%以上)、コミックや文庫(ともに同20〜30%)と続く。これまで小さな書店は、雑誌の売り上げで飯を食ってきたのだ。その売り上げに比べれば、文芸作品などのハードカバーの単行本が占める割りはグッと少なく、せいぜい4〜5%程度になる。

 一方、アマゾンのサイトを見てみると、単価の低い雑誌はあまり力をいれて扱っていない(週刊マンガ誌を置かないなど)。アマゾンは、圧倒的に書籍を売ってきて、ナンバーワンの書店になったのだ。アマゾン以外に、楽天ブックスをみても定期購読システムはおろか、単品で扱っている雑誌も少ない。唯一、富士山マガジンサービスが、定期購読や一部売りでネット販売をしているに過ぎないのだ。

 その上、アマゾンが日本に上陸したのは2000年11月。中小・零細書店の閉店はその前から始まっており、最も象徴的だったのは2000年1月に破たんした大阪の駸々堂だ。取次の日販は、その影響で当期の決算が赤字となり、朝日新聞夕刊の1面トップで経営危機が報じられたのをご記憶の方もいるだろう。

 個々の書店によって、赤字に陥った理由は異なる。だが、共通しているのは雑誌の売り上げ低迷による余波である。雑誌市場の売り上げは1997年以来、2012年まで右肩下がりを続けている。2013年もマイナス成長になるのは確実だ。その雑誌の売り上げが大幅に落ちているのだ(同時に配本部数も減ってきている)。中小書店に長く務める書店員に話を聞くと、「かつては毎週月曜日には『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)と『週刊東洋経済』(東洋経済)が何十部も入って、『JR時刻表』(交通新聞社)も外商で飛ぶように売れた。だけど、それは昔のこと。「コンビニエンスストアで雑誌を取り扱うようになってからというもの、もはや雑誌は数えるほどしか入ってこないし、入ってきてもそれほど売れない」というのだ。

 今日では、雑誌はコンビニで買うものと思ってる人も多いだろう。裏を返せば、中小書店はコンビニに「飯となる雑誌」を奪われたといえる。中小書店をまず苦境に立たせたのはコンビニなのである(今やそのコンビニの雑誌の売り上げもガタガタだが)。

 そして、中小書店が店舗を構える地方の商店街では、大型ショッピングモールや郊外店の出店などによる商圏変化でシャッター商店街化し「購入客が減少」。都市部では、駅前に大型書店が出店し、「来店客が減少」した。中小書店は、雑誌をコンビニに奪われて、次にコミックや文庫を大型書店や郊外店に奪われていったのである。売り上げの3本柱がこうも奪われてしまうと、まともに商売はできない。ネット書店の影響は、疲弊した中小書店には、それほど大きなインパクトを与えなかったのではないか? むしろ、先の理由から、ネット書店は書籍を中心に売っているジュンク堂書店丸善紀伊國屋書店などの大型書店に影響を与えているのではないだろうか?

成る程、と思う。ただ「コンビニ」の力というのはどれ程のものだったのか。コンビニが雑誌を扱い始めたのはかなり以前からのことだし、またコンビニには(今も昔も)大した雑誌は置いてないよということもある。コンビニが普通の書店に比べて勝っているのは時間だろう。週刊誌の場合だと、書店では10時過ぎにならないと買えないものを、コンビニでは朝6時前には買える*1。週刊誌ならともかく、月刊誌の場合は、みんな、その程度の時間差はあまり気にしないだろう。それよりも「地方の商店街」の衰退の方が重要であるように思える。商店街の歯医者、美容室、喫茶店などは業務用に雑誌を購入する大きなお得意様だったわけだから*2

*1:東京中心部のキオスクでは発売日の前日午後に買えるけど。

*2:See eg. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070819/1187533864 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090223/1235371049