「先頭」(メモ)

“こころ”の定点観測 (岩波新書)

“こころ”の定点観測 (岩波新書)

中井久夫*1「一精神科医の回顧」(in なだいなだ編『〈こころ〉の定点観測』*2、pp. 141-155)


曰く、


かつて、大学生になった日、警官隊に包囲されているデモ隊を見た。デモ隊は在日朝鮮人部隊を先頭に立てて、警官隊に突っ込んで行った。瞬時の乱闘の後、残っていたのは倒れて動かない朝鮮少年の姿であった。その間に、日本人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。私が、六全協(一九五三年)以前の、今にも革命が起こりそうな(大学限りの)ムードに同調しなかったのには、この目撃もあずかって力がある。その時のイメージは今も鮮明である。
私は、ある時期、「戦わざる医者」を自称して、当時精神医療をめぐる闘争が繰り返された学会の翌日かそこらに、疲れ果てている患者に会っていた。「戦う医者」の一部は、患者の疲れやすさを知らないのではないかと思った。活動家の医者に、闘争の翌日は必ず診察してほしいと、伝えたこともあった。学会に救護所を設けるように言ったこともあった。(pp.149-150)
See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060720/1153362526