ネーミングはやはり重要だ

「「特定秘密保護法案」は安倍晋三の「敗着」にはならない」http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20131130/1385769176


曰く、


秘密保護法案の今国会会期内成立を目指す安倍晋三を勢いづけたのは、「大胆な金融緩和」とリフレを売り物にした経済政策を打ち出したことによって株価が上がり、あたかも安倍晋三が日本経済を良くしたかのような幻想がばらまかれ、それを国民が信じ込んで内閣支持率が上がったからだろう。

この裏には、安倍晋三のブレーンの巧みな戦略があったと思われる。大胆な金融緩和やリフレは、スティグリッツクルーグマンといったアメリカのリベラル派のノーベル経済学者も推奨する政策であるが、竹中平蔵のブレーンを務めた「経済タカ派」の高橋洋一もこれを推奨している。つまり金融緩和とリフレだけなら何も「(経済)右(派)」や「(経済)左(派)」に限定される政策ではなく、高橋洋一のように、(極言すれば)金融政策をきっちりやっておけば財政政策などどうでも良い、みたいなスタンスもとり得る。安倍晋三の場合は高橋洋一の考えとは少々異なり、時代錯誤の土木公共事業に偏った「積極財政」を志向しているが、社会保障の縮小を目指す一方、労働政策では派遣労働の拡大を進めており、格差縮小などは全く考えていない。もちろんそれは、「大胆な金融緩和」やリフレを除けば、スティグリッツクルーグマンの思想からはかけ離れている。

何が言いたいかというと、日本の「リベラル派」経済学者や共産、社民の左翼政党、それに野田佳彦民主党)や小沢一郎(生活の党)といった保守の野党政治家たちが安倍政権の経済政策を批判するのに、まず「大胆な金融緩和とリフレ」に対する批判から入ってしまったことが安倍政権を利する結果になったということだ。これこそ上記勢力の「失着」であった。なぜなら、スティグリッツクルーグマンを「(いわゆる)『アベノミクス』の後ろ盾」に自ら押しやり、安倍内閣の支持率上昇に貢献してしまったからである。まさしくオウンゴール。その結果、いつか当ダイアリーで取り上げた、NHKの保守派記者・飯田香織が「安倍総理ノーベル賞を取れますか」などという(冗談ではあろうけれど)愚にもつかない質問をスティグリッツにするという失笑劇を引き起こした*1

経済学者の中には、「アベノミクス」をもじって「アホノミクス」なる造語をひねり出した人間もいるが、これまた「アベノミクス」なる不愉快きわまりない用語の浸透を後押しする逆効果を伴った「負け犬の遠吠え」であろう。このような「リベラル派」のエコノミストのふがいなさが安倍晋三のやりたい放題を助長してきた。

大まかに頷いてしまう。オーソドックスなリフレ政策を「アベノミクス」と呼び、それが全社会的に通用してしまったということが重要だろう。誰が「アベノミクス*2命名したのかわからないけど、このネーミングのセンスは敵ながら天晴れというべきだろう。「シゾフレ」「メランコ」の和田秀樹とは全然違う*3民主党にしても生活の党にしても共産党にしても、〈ノダノミクス〉や〈オザワノミクス〉や〈シイノミクス〉を提示できなかった不甲斐なさを徹底的に自己批判しなければ始まらないのでは?
勿論「アベノミクス」が失速し、安倍晋三が政権を擲げる可能性は大いにあるだろう。日本経済に対するダメージはともかくとして、その場合でも(時間差の関係で)「秘密保護法」は残ってしまうだろう。彼には「教育基本法」という〈前科〉があったのだった。