「アマゾン民族館」

『読売』の記事;


アマゾン専門博物館 閉館へ


 鶴岡市の「アマゾン民族館」と「アマゾン自然館」が来年3月で閉館する。アマゾン研究に情熱を注いだ同市の文化人類学者・山口吉彦さん(71)が、現地で集めた計約2万点を収蔵。研究者の間では、国内唯一の南米アマゾン専門博物館として知られ、コレクションも高く評価されているが、来館者は減り続け、昨年度は計1万4000人ほどだった。

 小学生時代に学校の図書館でアマゾン探検の本を読んで以来、アマゾンの研究を志したという山口さん。1970年代からブラジルやペルーのアマゾン川流域に入り、現地住民と寝食を共にした。

 ピラニアが生息するアマゾン川で舟が転覆、毒蛇にかまれても探検を続ける山口さんの熱意に住民も信頼を寄せ、インコの羽根の頭飾り、狩りで使用する吹き矢、豊穣を祈る祭りで使用する仮面、アルマジロの人形など、狩りや祭りに使う大切な道具も提供してくれるようになったという。

 資料は自宅で保管していたが、旧朝日村(現鶴岡市)が91年、地域振興に活用したいと自然館をオープンさせ、94年には同市も民族館を開館させた。最も多い時には、自然館10万2007人(92年度)、民族館3万6926人(94年度)の来館があったが、次第に関心が薄れ、昨年度はそれぞれ1万1583人、2642人に落ち込んでいた。

 市企画調整課の富樫泰課長は「市民の国際理解のための施設だったが、インターネットなどで情報が入手しやすくなったことを考えると、役割をすでに果たした」と閉館の理由を説明する。

 国立民族学博物館大阪府吹田市)で5〜8月に開かれた企画展「アマゾンの生き物文化」では、展示品約200点の6割は両館の資料。民族学博物館の池谷和信教授(環境人類学)は「特にブラジル地域の資料は非常に価値が高い。生かし方次第で多くの人の注目を集めることができる」と指摘する。

 自然館、民族館の膨大な収蔵品は、まとまった形で残されている点が価値を高めているとされるが、そのことが逆に引き受け先探しを難航させる結果となっている。今後、閉館後の資料の保存方法が、大きな課題となる可能性もある。

 山口さんは「命がけで集めた資料。散逸させず、適切に管理できる研究機関にまとめて引き取ってもらいたい」と話している。

 市は開会中の市議会9月定例会に民族館の廃止条例案を提出している。自然館についても、12月定例会で同様の条例案を出す予定。
(2013年9月3日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamagata/news/20130902-OYT8T01414.htm

地元の『山形新聞』は既に今年3月に報道している;

【鶴岡】アマゾン「自然館」と「民族館」、異文化最後まで発信 14年春閉館へ、催しや校外活動誘致
2013年03月20日



 鶴岡市内の二つのアマゾン施設「アマゾン自然館」とについて、2014年3月の閉館に向けた準備が進んでいる。入館者数の減少や、2万点近い収蔵品のあり方を見据えたもの。両館館長でアマゾン研究家の山口吉彦さん(71)は「残り1年、子どもたちにアマゾンに触れて世界の人や自然に関心を持ってもらえるように頑張りたい」と話している。

 動物の剥製や昆虫の標本などを展示する自然館は1991年に月山あさひ博物村内に、頭飾りや仮面など生活用具を中心に並ぶ民族館は94年に出羽庄内国際村内にそれぞれオープン。2005年の市町村合併によって1自治体に二つのアマゾン施設が存在することになった。資料はいずれも山口さんのコレクションを有償で借り受けている。

 入館者数は自然館は92年度の10万2千人、民族館は94年度の3万7千人をピークにそれぞれ減少し、11年度は8700人、2千人まで落ち込んだ。両館の廃止は「市行財政改革大綱に基づく実施計画」(2011年7月)の中で示され、▽開館20年前後となり異文化理解の点で一定の役割を果たした▽入館者数の減少と資料賃借料などの費用対効果▽展示収蔵資料の管理や活用―などの点から閉館の方向性が盛り込まれたという。市は来年度の市議会で両施設の廃止に関する議案を提出する方針だ。

 両施設には貴重な資料が数多く展示収蔵されており、昨年6月には秋篠宮さまと長女の眞子さまも出席されて「生き物文化誌学会」の鶴岡例会が開かれるなど、研究者の評価は高い。現在、2万点に及ぶ資料のデータベース化が行われているほか、ことし5月〜8月には国立民族学博物館大阪府吹田市)で両施設の資料を使った企画展が予定されている。

 山口さんは「閉館はほぼ決まったことなので仕方ない。この1年間で、特に小中学生に両施設に少しでも来てもらい、グローバルな視点を持った子どもが育ってくれるように取り組みたい」と話しており、小中学校の校外活動の誘致を積極的に行い、イベントも実施していくという。

 一方、今後の資料について市は「大変貴重なものばかり。学術的に生かされるところを山口館長が探しており、市もサポートしていく」としており、他の研究者らの力も借りながらできるだけ早く新たな収蔵先を見つけたい考えだ。

 月山あさひ博物村と出羽庄内国際村*1自体は、14年度以降も存続する。
http://yamagata-np.jp/localnews_pickup/shonai/kj_2013032000623.php

「アマゾン民族館」*2についても、山口吉彦氏についても知らなかった。ウィキペディアに曰く、

1942年、山形県鶴岡市に生れる。1965年、東京農業大学農業拓殖科卒業。フランスのボルドー大学へ留学し、のちにリヨン大学へ移る。1971年、ペルーの日本語学校で講師となる。アマゾン奥地のインディオ集落などを調査する。1975年、結婚。1982年、自宅に「アマゾン資料館」を開設し、これまで収集した資料を公開する。1985年、外国人留学生に、ホームステイなどを体験させる「庄内国際青年祭」を実施する。1987年、国際交流活動組織「庄内国際交流協会」を発足させる。1988年、山形新聞3P賞(平和賞)を受賞。1990年、国際交流基金地域交流振興賞を受賞。1991年、東田川郡朝日村(現 鶴岡市)に、所有する生物資料を中心に展示した「アマゾン自然館」開設される。1991年、NHK東北ふるさと賞を受賞する。1994年、「アマゾン民族館」が開館し、館長に就任する。1996年、大同生命国際文化基金地域研究特別賞を受賞する。1998年、サントリー地域文化賞を受賞。2003年、カバヤ食品の食品玩具「大神秘アマゾン」の監修を務める。2005年、鶴岡市制功労表彰受賞。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E5%90%89%E5%BD%A6 *3
アマゾンというと中流部・下流部の伯剌西爾を先ず思い出してしまうが、この山口氏は(『モーターサイクル・ダイアリーズ*4)のチェ・ゲバラみたいに先ずペルー領の上流部からアマゾンにアプローチしたのか、と思った。
チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記

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コレクションだけど、『ワシントン・ポスト』を買収したJeff Bezosが買い取るというのはどうよ。