経済学的問題など

「無駄に高学歴」という言葉を知ったのだった。でも何故俺のところに取材に来ないのだ!?


村本剛さん(31歳)は明治大学大学院政治経済学研究科を卒業し、現在は知人に紹介された会社で医薬品のプロモーションの仕事をしていますが手取りは約19万円です。全ての原因は就活の失敗にあったと言います。村松さんは大学4年生で就職活動がうまくいかなかったため大学院に進学しました。村本さんはフルタイムで働いてくれる妻のために家事は率先して行っています。

1998年、新聞の一面に載った大学飛び入学第一号の佐藤和俊さん。佐藤和俊さんは高校2年生にして相対性理論をマスターし末は博士ともてはやされました。あれから14年、佐藤さんは千葉県の家賃4万円のアパートで暮らしています。2Kの部屋で妻と7歳の娘と3人暮らしをしています。31歳になった佐藤さんはネットで正社員の職を探しています。伸び悩む日本経済にあってメーカーの研究所や大学の研究室の門は年々狭くなる一方。ところが博士の数はここ40年で約4倍に増えています。これでは飛び入学第一号という頭脳を持ってしても簡単に就職など決まるはずがありません。佐藤和俊さんは今、学習塾の講師で日々の糧を稼いでいます。とはいえ、1コマいくらの契約のため授業の少ない月は暮らしていくだけで精一杯です。4月末の振込みは11万8890円でした。去年の年収は270万円。この中から年金や健康保険を支払わなければなりません。健康保険料は年36万円にもなります。そんな時役に立ったのが趣味で取得した大型免許でした。これまでもお金に困ると大型トラックの運転で日々の暮らしを凌いできました。その稼ぎは塾の講師や大学の非常勤講師とほぼ同じだったと言います。
http://tv-blog.blog.so-net.ne.jp/2012-06-24-1

はいはい、思い出しました。「大学飛び入学」。たしか千葉大学だと思ったけれど、今でもこの制度は続いているのか。
経済学的な言葉遣いをすれば、教育投資の収益率低下ということになるのだろうか*1。或いは、ロナルド・ドーア的な言い方をすれば学歴インフレ(『学歴社会 新しい文明病』)。そもそも高学歴=高収入となって教育投資から収益が生じるのは学歴が稀少資源であるときだ。みんなが教育に投資すればするほど、学歴の稀少性は薄れ、収益は低下する*2。90%以上の人が博士号を持っている社会があるとする。そういう社会では博士号を持っているということはふつうのことなので、博士号を持っていてもふつうの収入、世間並みの収入しか期待できないだろう*3。教育投資が煽られれば煽られるほど学歴インフレは昂進していく。では教育(学歴)に関してデフレ政策が必要なのだろうか。そうであるまい。学歴と教養を同一視することはできないけれど、平均学歴が上がることによって教養の平均が底上げされるのは、それ自体として、無条件によきことである。勿論、「博識の市民(well-informed citizen)」*4の増大はデモクラシーの維持・発展のための重要な条件であるという政治的な意味もある。
学歴社会 新しい文明病 (同時代ライブラリー)

学歴社会 新しい文明病 (同時代ライブラリー)

ここから、ミニマムな学歴の人でもそれなりにッディーセントな生活ができるようにするという経済政策が求められるということはいえるだろう。