John Strong以来?


フォークランド諸島の領有権について、本当に国際法上イギリスに一方的な理があるのか、それ自体疑わしいと私は思うが、仮にイギリスに一方的に国際法上の理があるというまことしやかな通説が本当であるとすれば、国際法というのもずいぶんと不正義や矛盾をはらんだいい加減なものだと思わずにはいられない。こんなことを書くとまたまた批判を浴びそうだが、フォークランド諸島の地理的な位置からして、イギリスに領有権があって然るべきだとは私には到底信じられないのである。http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20130410/1365526856
フォークランド諸島の領有権を巡っては、英国に「一方的」な理があるわけではないが、かなりの理があることは事実である。
以下、張綱綱「英阿馬島之争了猶未了」(『南風窓』2013年4月10日号、pp.78-79)という記事を参照しつつ。
アルヘンティナ東岸から約500キロ沖にあるマルビナス群島(フォークランド諸島)が〈発見〉されたのは16世紀になってからだが、誰が最初に発見したのかということについては諸説紛々であるが*1、史料に記載された最初の上陸者(漂流者)は英国人*2John Strongである。マルビナス群島(フォークランド諸島)は800近くの島々から構成されるが、その中でも最大の島は東フォークランド島と西フォークランド島。1764年に仏蘭西が東フォークランド島に拠点を建設し、翌1765年に英国が西フォークランド島に拠点を建設した。英国は仏蘭西が既に進出していたことに気づかなかった。仏蘭西は自らの拠点を1767年に西班牙に譲渡してしまう。英国も1774年に「経済」的な理由で撤退してしまう。西班牙はアメリカ大陸殖民地の独立戦争の混乱の中で1811年に撤退する。マルビナス群島(フォークランド諸島)は元の無人島に戻ったが、独立したばかりのアルヘンティナが1820年に役人を派遣し、群島に対する主権を主張した。1833年に英国が捲土重来し、アルヘンティナの役人を放逐し、群島を奪還する。1841年にフォークランド諸島は英国殖民地(「海外領地」)に正式に編入されて、現在に至る。勿論その後もアルヘンティナ側は、マルビナス群島は英国によって不当に武力で強奪された領土であると主張し続けた。ただ1960年代に英国は住民の従来の「生活方式」の不変という条件でフォークランド諸島をアルヘンティナに委譲すべく、アルヘンティナ政府と秘密交渉を行っていた。しかし、どういうわけか、この秘密交渉がメディアによって暴露され、フォークランド諸島の住民から強い反対が捲き起こり、アルヘンティナとの交渉は中止に追い込まれた。マルビナス群島(フォークランド諸島)の住民は英国の領有以後に移民してきた英国系の人たちで、日常的にも(西班牙語ではなく)英語を話している。そして、1982年のアルヘンティナ軍の侵攻。当時のアルヘンティナは(サッチャーレーガンのお友だちだった隣国のピノチェトに負けず劣らずの)凶暴・凶悪な軍事独裁政権が支配していた*3。1980年代に入ってからの経済危機で、反政府デモが頻発する事態になっており、マルビナス群島への侵攻はそうした国内の不満の瓦斯抜きという意味を持っていた。英国側も米軍やNATOの助けを借りてやっと勝てたわけだから、寧ろこれはかつての大英帝国の衰退を象徴する事態だったといえる。ところで、フォークランド紛争における老舗の帝国主義vs. 新興の軍事独裁政権という図式は1991年の湾岸戦争でもそっくり引き継がれていたのだった。さて、サッチャーの英国においてもその残虐な新自由主義政策や不況による不満は渦巻いていたわけで、サッチャーもこの戦争を瓦斯抜きとして利用し、成功したわけだ。英国とアルヘンティナの国交は1990年にようやく恢復するが、2007年にアルヘンティナ側は再度マルビナス群島の主権を主張し、英国側に交渉を要求し、2009年には英国のブラウン首相がアルヘンティナのクリスティナ大統領との会談でフォークランド諸島の主権帰属問題について交渉の余地はないと宣言するなど、両国の関係は緊張が続いている。マルビナス群島(フォークランド諸島)の問題は2010年に大量の石油の埋蔵が確認されて以降、両国の(或いは石油資本間の)資源争奪戦の様相も呈している。
英国のフォークランド諸島領有の最大の根拠のひとつは住民の意思であろう。今年の3月にフォークランド諸島の英国への帰属の継続の是非を問う住民投票が行われたが、その結果、賛成票が99.8%に達した(反対票は投票数1517人のうち3票)*4
さて、マルビナス群島(フォークランド諸島)紛争については(基本的に英国的立場のものだが)、


“Falkland Islands: What are the competing claims?” http://www.bbc.co.uk/news/magazine-17045169
“The Falklands Conflict - Chronology of Events” http://www.falklandswar.org.uk/chron.htm
History of the Falkland Islands” http://www.historyworld.net/wrldhis/plaintexthistories.asp?historyid=ac51

*1:アルヘンティナでは西班牙人の船乗りが発見したということになっている。但し具体的な人名や日付は不詳。http://www.falklandswar.org.uk/chron.htm

*2:UK以前なので、イングランド人というべきか。

*3:See eg. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130315/1363340364

*4:See eg. “Falklands referendum: Voters choose to remain UK territory” http://www.bbc.co.uk/news/uk-21750909 Jonathan Watts & Uki Goni “Falkland Islands: respect overwhelming 'yes' vote, Cameron tells Argentina” http://www.guardian.co.uk/uk/2013/mar/12/falkland-islands-referendum-votes-yes James Dawson “Was the Falklands referendum the most unanimous election ever? “ http://www.newstatesman.com/politics/2013/03/was-falklands-referendum-most-unanimous-election-ever Neil Tweedie “Falkland islands referendum: who were the three 'No' votes? “ http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/southamerica/falklandislands/9925693/Falkland-islands-referendum-who-were-the-three-No-votes.html