大東犬

『沖縄タイムズ』の記事;

純血「大東犬」繁殖に成功

沖縄タイムス 3月1日(金)9時56分配信



 【名護】絶滅が危惧されていた南大東島の「大東犬」を守ろうと、純血種の保存研究に取り組んでいる人がいる。2010年に結成された「だいとうけん保存会」の初代会長に就いた宮城保雄さん(59)が保存に力を注ぐようになったのは、友人から新築祝いにとプレゼントされたのがきっかけだったという。
 大東犬南大東島へ約100年前に移住した人々によって持ち込まれたもので、足が短く、がに股で、耳はピンと立ち、白色に茶色の円形模様が特徴。
 宮城さんは、市内で不動産業を営む傍ら市名護でウサギやリス、チャボなど約10種類の動物を飼う「なんちゃって動物園」を無料開放している。大東犬も純血種で雄の「ムーム」(6歳)と、75%の血が混ざっているという雌の「阪」(4歳)、「阪」の娘の「神」(2歳)の3頭を飼っている。ムームは体高約30センチ、体重は約9キロ。雌2頭はそれよりひと回り小さい。
 宮城さんが、大東犬と出会ったのは2005年。新築祝いに友人からプレゼントされ「本当に変わった犬だった。今では普通の犬を見ると足が長すぎて変な感じがする」と話す。図鑑などで調べて絶滅が危惧されていると知り、繁殖の研究に取り組んだ。
 宮城さんが研究を始めたころは南大東島に5頭生息、このうち1頭が死んで4頭になっていたが、純血同種の掛け合わせに成功し、2頭を島に提供。また、2008年には純血雌雄から生まれた雄1頭を沖縄市の「沖縄こどもの国」へ提供した。
 宮城さんは「飼うのが目的ではなく、貴重な犬だから増やさなければならないと研究を重ねた」と振り返る。現在、ムームのきょうだいは徳之島に2頭、名護市内で1頭飼われている。娘の佑奈さん(大北小4年)は「小さいけど散歩のときの力は強い」と愛犬たちを見つめた。(玉城学通信員)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130301-00000016-okinawat-oki

これは名護市での話。
「絶滅」の危機を伝える2005年の記事;

大東犬、消滅のピンチ(2005年12月掲載)
T

社会

2005年12月30日 09時51分

 南大東島南大東村)で「大東犬」の名で親しまれる胴長短足の雑種が減っている。愛嬌ある容姿に変化してきたのは孤島の環境が作用したとされるが、減少の背景には開拓百年を経て島外交流が進んだ島の暮らしの一端が反映されているようだ。観光にも一役買う名物犬の「絶滅」を危ぶむ声も出ている。戌年を迎える島を訪ねた。(澄川卓也)

 呉屋泰弘さん(64)=同村北=のプックル(十歳)は農家の番犬。隣家まで三百メートル離れているが、「ほえるので、畑にいても客が分かる」と呉屋さん。

 観光客が立ち寄るのが、浅沼美智子さん(35)=同=の老犬ダイスケ(十四歳)だ。耳が遠くなったが今もよくほえる。

 比嘉栄信さん(82)=同村在所=のシロ(十一歳)は、気立てのよさから、二〇〇〇年に来島した秋篠宮ご夫妻に「大東犬代表」として面会していた。

 喜納篤さん(44)=同=のムク(二歳)は警戒心が強く、喜納末子さん(69)=同村池之沢=のコロ(八歳)は、畑仕事の同伴が日課で、末子さんは「短足で親しみがある」と笑う。

 村商工会の金城茂孝さん(27)と探し回り、確認できたのはこの五匹。高齢化しすべて雄で、島に子孫がいるかどうか把握されていない。

 金城さんは「五年前には十五匹ぐらいいたはずで、これほど少なくなったとは。今のうちに記録を残しておかないと…」と神妙な顔つきになった。

 胴長短足、がにまたでよくほえる―。こんな特徴の雑種に、いつしか大東犬の名が付けられた。

 「台風で飛ばされないため」「島が狭く歩かないから」と、容姿の由来には珍説もあるが、百年前に八丈島から渡った開拓民の小型の飼い犬が、外部から隔てられた環境で近親交配を重ねるうちに現在の容姿に変化したというのが一般的だ。

 観光業を営む上江洲仁志さん(45)は、減少の要因を島外との交流の進展にみる。一九九七年に新空港が開港し、二〇〇〇年には開拓百周年で島が全国にPRされた。

 「日本一の短足犬」としてメディアで話題になり子犬が島外にもらわれたり、観光客の増加で放し飼いが減り野放図な交配ができなくなったため、と上江洲さんは指摘する。

 村に登録された犬は八十四匹(六月現在)で、約三割はダックスフントマルチーズなどの血統犬が占める。ペットブームで持ち込まれる洋犬も増えており、雑種化が一層進みそうだ。

 二十年前、大東犬を譲り受けて飼った経験のある獣医師の新垣義雄さん(66)=与那原町=はこう話す。「地域の人が大事に育ててきた犬。ある程度、昔の形で残り、『大東犬』の名称が残ってほしい」
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2005-12-30_45938

大東犬」の存在を知らなかった。記事の写真を見る限り、短足である以外は、日本犬ぽいのもいるし洋犬ぽいのもいるという感じ*1八丈島からの移民が連れてきた犬の子孫ということだけど、その大元の八丈島の固有種の犬というのは今はどうなっているの? ちょっと前に某サラ金のCMでも名を馳せたコーギーもそうなのだけど、短足の犬に〈可愛さ〉を感じる人というのはけっこういるんだね。
ところで戦前の南大東島というのは何だか〈ブラック企業家〉のユートピアみたいな島であったようだ*2。現在の島民の方々は、記事に出ている苗字から推測すると、(当然の話かも知れないけど)八丈島系の人だけでなく、沖縄系の人も入り混じっているようだ。「比嘉」さんとか「喜納」さんというのは沖縄系だろう。「浅沼」さんというのは八丈島系? 社会党委員長だった浅沼稲次郎は三宅島の人だったけど。浅沼稲次郎ということで、沢木耕太郎の『テロルの決算』を取り敢えずマークしておく。
テロルの決算 (文春文庫)

テロルの決算 (文春文庫)

*1:耳は立っているのもいれば垂れているのもいる。尻尾はみな巻いているようだ。

*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E5%A4%A7%E6%9D%B1%E5%B3%B6