津武欣也「もう一度食べたい:安藤みかん」『毎日新聞』2013年1月29日
「安藤みかん」とは;
江戸時代、現在の田辺市上屋敷にあった田辺藩士、安藤治兵衛の邸宅の竹やぶに自生したと伝えられ、その名がついた。[南方]熊楠は晩年、グレープフルーツに似た安藤みかんが外国人相手の都会のホテルなどに売れるのではと考え、苗木の配布などを試み、普及を図ったが、太平洋戦争の勃発で広がることはなかった。(後略)
津武氏は、谷川健一、中瀬喜陽、南方文枝『素顔の南方熊楠』(朝日文庫)に「安藤みかん」の記述があるという。この本、10年以上前に読んでいるのだが、勿論「安藤みかん」のことは憶えていない。
畑で安藤みかんを初めて味わった。皮は簡単にむけ、実にジューシー。柑橘特有の清冷な香りが、ほのかに指先にからんだ。味も香りも実に控えめで、これほど自己主張しないみかんも珍しい。在野の学者として異彩を放った奇人・熊楠は、自分とはまったく逆の、この無色の味にこそ魅了されたのかもしれない。
See also http://www.minakata.org/cnts/kyutei/index.cgi?v=65401&p=0
- 作者: 谷川健一,南方文枝,中瀬喜陽
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 1994/09
- メディア: 文庫
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