〈ナマポ〉叩き(メモ)

吉本の藝人、河本準一へのバッシングから始まった生活保護制度や生活保護制度利用者に対するバッシングについて何かしらのコメントをしようしようと思いつつしていなかった*1。まあ一方で片山さつき*2だの世耕弘成だのといった政治屋どもの暗躍や自民党民主党といった政党の都合、他方でバッシングを煽られ・煽っているオンライン/オフラインの大衆の存在を考えるべきなのだろう。
既に話のネタとしては旬ではなくなっているかも知れぬが、このトピックについて私が読んだテクストを列挙する(少々ランダム)。


片山さつきがWiLL文化人になっていた」http://d.hatena.ne.jp/nessko/20120527/p2
有村悠「よく見よう&見えすぎちゃって困るの、生活保護http://lunaticprophet.org/archives/13044
松永英明河本準一氏叩きで見失われる本当の問題」http://www.kotono8.com/2012/05/25komotojunichi.html
松永英明生活保護受給者の97%は日本国籍(「生活保護・在日」問題に関する統計)」http://www.kotono8.com/2012/05/31seihozainichi.html
生活保護問題対策全国会議、全国生活保護裁判連絡会「生活保護制度に関する冷静な報道と議論を求める緊急声明」http://www.moyai.net/modules/d3blog/details.php?bid=1510
「見えないクーデター」http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20120530/p1
雨宮処凛「芸能人家族の生活保護問題に思う。の巻」http://www.magazine9.jp/karin/120530/
「火事場泥棒の民主党と、論外な自民党http://kodebuya.hatenadiary.com/entry/20120529/1338287360
パンドラの箱は片山氏一人で開けたわけではない」http://d.hatena.ne.jp/takamm/20120530/1338392586


また星野智幸氏は5月26日付けの無題の日記*3で、


この件で異様さを感じるのは、生活保護の実態への関心など本当はなく、ただ世間の何でもいいから叩いてやりたい、バッシングしたいという気分に、人気の芸能人がらみという点がうってつけだったために騒ぎが大きくなっただけなのにもかかわらず、政治が動いている点だ。政治を動かす要素は、もはや現場の実情や構造、その分析ではなく、世の中の漠然とした気分へと、すっかり取って代わっている。

今の世の、叩きのめしたい、バッシングしたい、非難をぶつけてやりたいという欲望は、特に震災原発事故後、とてつもなく巨大化していて、強大な暴力となっている。一人一人の内面の苛立ちは無力なものだから、それが集団ではどれほど威力のある暴力なのか、個々人が意識するのは難しい。だから、エスカレートする一方だ。今回の生活保護の問題は、一部の政治家が、その巨大な暴力を利用して、またメディアも無意識にそれに荷担して、生存の瀬戸際にいる者たちの背を押させようとした、という事件だと、私は思っている。イギリス人が、植民地支配しているインドで、イスラム教徒をたきつけてヒンドゥー教徒を攻撃させることで、自分たちの思いどおりの施策を実行した、分断統治のやり方だ。背中を押しているほうも押されているほうも、じつは同じような立場に置かれている一般人だ。
と述べている。また、

その底にあるのは、象徴的に言えば、「人を殺したい欲望」だと、私は思ってる。
 それが端的に表れているのが、日本の「死刑制度」への支持率*4だ。昔から高かったが、最近はさらに上昇し続けている。私は、このバッシング社会が死刑制度支持を高めているのを見ると、みんな人を殺したいんだなあと感じる。つまり、死刑制度は、法に守られたバッシングと化している。
 ただし、この場合の「人」は、じつは他人だけではない。そこには自分も含まれる。どうにもならない理不尽にさらされ続け、ひたすら無力感に打ちのめされてきた結果、私たちの社会のものすごく多くの人が、無意識のうちに、この社会をぶちこわしたい、めちゃくちゃにしたい、そうでないと劇的になんか変わらない、という気分に支配されている。あるいは、自分が終われば、少なくとも自分の意識の中ではこの理不尽は消える。選択肢はどちらかしかない。社会がめちゃくちゃになるか、自分が消えるか。どちらも同じこと。
 だから、そんなバッシングをしたら、当の自分が苦しくなる、というようなケースでも、平然とバッシングに熱狂する。後で自分が終わろうが、どうでもいいのだ。今の自分がスカッとすれば。少なくとも誰かが苦しめば、自分は少し楽になる。集団化した巨大なバッシングは、あたかも古い社会を壊すかのような幻想を与えてくれる。
 私たちがバッシングし、叩こうとし、殺そうとしているのは、「俺」なのだ。自分なのだ。私たちは、おぞましい悪夢を生きている。
とも。
その一方で、

「助けて」1日2万件、死にたい・食べてない…

 東日本大震災後の社会不安の高まりを受けて、国の補助金で3月にスタートした無料相談ダイヤルに電話が殺到し、開設2か月あまりでパンク寸前となっている。

 「死にたい」「5日間何も食べていない」など深刻な悩みも多く、厳しい世相を反映している。

 一般社団法人「社会的包摂サポートセンター」(本部・東京)が行う24時間対応の「よりそいホットライン」。貧困、失業、いじめなどあらゆる悩みを1か所で受け止めるワンストップ型の支援が好評で、1日約2万件の電話に対し、つながるのは1200件程度だ。

 全国38か所の支援拠点で、午前10時〜午後10時は計30回線、深夜・早朝も計10回線を用意。1回線に2人の相談員がつき、計約1200人が交代で対応する。活動に協力する各地の弁護士などが必要に応じて助言。命に関わる場合には、福祉団体などの支援員が相談者のもとへ駆けつける。

 インターネット上の口コミなどで存在が周知され、今では平均20回かけてやっと通じる状態だ。

 相談の7割は生活上の悩みで、30〜50歳代からの電話が多い。「失業して家を失った」「生きていてもしょうがない」「誰かと話がしたかった」など、貧困や孤独を訴える声が目立つ。

 失業して生活保護を申請中という30歳代の男性は、「所持金が底をつき、何日も食べていない」と助けを求めてきた。衰弱した様子で、「命に関わる」と判断した相談員は、支援員に連絡して食料を届けた。「どこに相談しても、誰も助けてくれなかった」と、男性から感謝された。
(2012年5月31日14時44分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120531-OYT1T00681.htm

という報道もあり。
このことは仁/不仁の区別*5という東洋思想の根本問題に関係しているということは言っておきたい。