スキルを!

「自殺した奴を保護するな。「自殺=悪」とすれば、自殺は減る。」http://blog.livedoor.jp/ikiradio/archives/51488904.html


2010年のエントリーだが、最近になって再度話題になっているようだ。
まあ自殺を肯定するのか否定するのかというのは、宗教的信念その他によって、様々なスタンスがあり得るだろうし、自殺の是非を巡る倫理学的議論ももっと行われてもいいと思う。ただ上掲のエントリーを書いた「非モテSNS」を運営しているという方の自殺を減らしたいという願いに沿って考えてみると、ここで言われていることというのは全く効果が見込めないと思う。たしかに自殺を賛美するような言説が蔓延が自殺を後押しすることになるということは言えるだろう(Cf. 高橋祥友群発自殺*1)。この人は「親や友達の気持ち」を配慮せよという。しかしそもそも、「親や友達の気持ち」を配慮する余裕がある人は自殺しないだろう。そのような余裕がなくなってしまうから、自殺という「選択肢」が前面化するわけだ。また〈自殺=悪〉という道徳規範が確立されたとしても、その効果の程はわからない。これには、自殺が宗教的な罪であるとする基督教社会でも自殺は存在し、中には日本以上の自殺率がある国もあることが参考になるか。この人は「見ず知らずの人からもよく自殺の相談を受」けるらしいが、その際に「僕が頑張って生きるから、その後ろ姿を見て自分の力で立ち上がって、やる気を出してくれ!」とか答えているらしいこと。しかし自殺願望という爆弾を自らの裡に抱えつつ生きるのに必要なのはそのような精神論ではなく具体的なスキルなのだ。さらに、これは無効果どころか逆効果かも知れない。自殺しようという人には鬱病を患っている人も少なくない筈だけど、鬱病の人に〈頑張れ〉は禁句だというのは常識に属す筈だ。

See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110705/1309798635

*1:但し高橋氏によれば、自殺肯定だけが問題なのではない。自殺に対して中立的でも否定的でも、とにかく自殺を大々的に取り上げること自体が自殺を後押ししてしまうことになるのだ。