正しい言葉遣いを教えるべきだ

承前*1

鉢呂吉雄経済産業相辞任問題について、いくつか。
先ず、


長谷川幸洋「当事者が初めて語った「放射能失言」の裏側!鉢呂経産大臣は原発村を揺るがす「原発エネルギー政策見直し人事」の発表寸前だった」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/19475


辞任後の鉢呂氏へのインタヴュー。
放射能」発言を巡る本人の言い分;


 -「放射能をうつしてやる」と言ったのは本当か。*2

「『うつしてやる』とか『分けてやるよ』と言った記憶は本当にないんです。もしかしたら『ほら』という言葉は言ったかもしれないが、それさえ、はっきり覚えていない。『ほら、放射能』という報道もあったが、放射能という言葉を出したかどうか分からない」

「はっきり言えるのは、私が防災服を記者になすりつけるような仕草をしたことはないっていう点です。一歩くらい記者に近づいたことはあったかもしれないが、なすりつけるようなことはしていない。そんなことがあれば覚えています」

鉢呂氏が語るところでは、その現場にいた記者の多くは政治部ではなくて経済部の人間だった。第一報の「フジテレビ」の記者は現場にはいなかった。
長谷川氏は経済産業省官僚による陰謀を匂わせているが、匂わせているだけで、「いまとなっては真実は闇の中である」と逃げを打っている。本人も

 -ずばり聞くが「大臣は経済産業省にはめられたのではないか」という説がある。これをどう思うか。

「それは憶測でしょう。私は推測でモノは言いたくない」

と陰謀を肯定はしていない。官僚の陰謀というのはないと思う。というか、ここまでベタな陰謀に頼るとしたら日本の官僚制も〈死〉が近いといえるのでは? ただ、大臣秘書官が大臣をフジテレビに売ったと推測しているエントリーもある*3。しかし、http://hansenjuku.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-2dd3.htmlに引用されている『毎日』の弁明によれば、

毎日新聞は鉢呂氏の言動について、非公式な場での悪ふざけととらえ、翌9日朝刊では報じなかった。しかし、鉢呂氏は9日午前の会見でも、福島第1原発の視察に関し「まさに死の町」と発言。8日の言動と合わせて、閣僚としての資質に疑義を抱かざるを得ず、同氏の進退に発展しかねない重大な問題と判断し、10 日朝刊に事実関係を掲載した*4
という経緯であり、あくまでも「死の町」が問題視されたことによって「8日の言動」が呼び出された。「8日の言動」の言動は(結果として駄目押しになったとはいえ)おまけにすぎなかったわけだ。「死の町」の段階で鉢呂氏の敗北は既に確定していた。
「死の町」という表現がメディア関係者や一般大衆の言語感覚を逆撫でしたことはたしかなようだ。元農協職員の鉢呂氏に対して、日本語のプロフェッショナルである大手メディアの記者がすべきことは正しい言い方を教えてやるということだったのでは?


高橋洋一*5「あえて「失言辞任」に異論を唱える。なぜ新聞、テレビは自分たちが知っているはずの「鉢呂発言」の事実を報じないのか 本来、失言よりも問うべきは政策だ」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/19197


放射能」のヴァリアシオンをコピーしておく;


ネットの上で、検索すると、9日深夜から10日にかけて各紙で報道されているのがわかる。各紙のいいぶりと掲載時間は以下の通りだ。朝刊最終版に向けて、各社必死だったのだろう。

放射能をうつしてやる」(産経新聞 9月9日 23時51分)
放射能をうつしてやる」(共同通信 9月10日 00時07分)
放射能をつけちゃうぞ」(朝日新聞 9月10日 01時30分)
放射能をつけたぞ」(毎日新聞 9月10日 02時59分)
「ほら、放射能」(読売新聞 9月10日 03時03分)
放射能をつけてやろうか」(日経新聞 9月10日 13時34分)
放射能を分けてやるよ」(FNN 9月10日 15時05分)

面白いことに各紙でいいぶりが異なっている。

今気付いたのだが、『読売』のが鉢呂氏本人の記憶に近い。