枝野君怒る

IT Mediaニュースから;


枝野官房長官、「家族を海外に逃がした」デマに刑事告訴検討
枝野幸男官房長官東日本大震災後に家族を海外に逃した」という「あまりに悪質な情報」がネット上に出回っているとして、枝野長官は刑事告訴を検討していることを明らかにした。
2011年07月12日 18時52分 更新


 「枝野幸男官房長官東日本大震災後に家族を海外に逃した」などという情報がネット上で出回っているのは「悪質なデマ」だとして、枝野長官は7月 12日午後の記者会見で、法的措置を含めて対応を検討していることを明らかにした。枝野長官は「法的措置は民事ではなく、やるなら刑事(告訴)だと思っている」と述べた。

 ネット上では、「震災の後に枝野長官が家族をシンガポールに逃し、『たまたま家族がシンガポールに旅行しているだけ』などと言い訳した」といった情報が流れている。これに対し枝野長官は自身のメールマガジンで事実ではないと反論し、会見でも「妻も子ども2人も震災以来、海外に出たことはない」と否定。「あまりに悪質なものがネット上に出回り、少なからず信じてる人もいる状況。政府の信頼性にも影響がある」として刑事告訴を検討していることを明らかにした。

 枝野長官は弁護士。


枝野長官の会見でのコメントは以下の通り。

 妻も子ども2人も震災以来、東京の国会そばの宿舎と大宮の自宅におり、海外に出たということは全くないし、放射能の関係で逃げようとした、逃がそうとしたことは全くない。しかし残念ながら、ネット上でデマ情報が相当広範にわたって広がっているのは従来から承知している。

 率直に言って、さまざまな報道やネット上の書き込みなどには事実でないこともあり、腹が立つことも少なからずあるが、わたしは“良貨が悪貨を駆逐する”と思っているので、いちいち反応、対応はしてはこなかった。だがあまりに悪質なものが継続してネット上で流通し、少なからず信じている方がいる状況なので、わたし自身の名誉というより、わたしが原発・政府関連の広報窓口をやっている中、「あんなことを言っているが自分の家族を逃がしているのか」という誤解があれば、政府としての発信の信頼性に影響があると思うので、明確に姿勢を明らかにした。

 法的措置は検討はしているが、検討しているのは民事ではなく、やるなら刑事だと思っている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1107/12/news088.html

枝野幸男*1が家族をシンガポールに逃がした云々という話は読んだことはある。勿論、誰であっても、自分や身内に関する悪質な情報を流されて、精神的なダメージを受け、自らの職務に支障を来したならば、その発信者を告訴する権利はあるだろう。ところで、枝野氏の名誉が傷つけられ・官房長官としての職務も妨害されたということを証明するためには、「海外に逃がした」という情報の信憑性を測定する必要があるだろう。誰も信じていない情報によってそのような効果がもたらされる筈はないからだ。ではどうやって測定するの? 裁判所或いは枝野氏自身が第三者機関である調査会社に委嘱して、ランダム・サンプリングのアンケート調査をするのだろうか。

――あなたは枝野幸男官房長官放射能汚染を恐れて自分の家族を海外に逃がしたということを見たり・読んだり・聞いたりしたことがありますか。
――はい/いいえ
――(「はい」と答えた人に)あなたはそのことを事実だと信じていますか。
――はい/いいえ

さらに誰が訴えられるのか。取り敢えず被疑者不明ということでも、被疑者不明では裁判は開けまい。以前、所謂デマと流言の区別に言及したことがある*2。具体的に容疑者・被告になるのは、自覚的にデマを流したデマゴーグ、つまり「海外に逃がした」云々を嘘と知りつつ敢えて拡散した者でなければならないだろう。また、誰にもまして責任を追及されなければいけないのは、この逃亡話のオリジナルな著者、この話を最初に発明した者だろう。逃亡話を真実だと思ってblogやらTwitterで言及したというような者、つまりデマではなくて流言の水準にある者は被告にされるべきではないと思う。しかし、オリジナルな著者に辿り着くことは可能なのかどうか。
辿り着いたとして、その者が結果的に刑事責任を問われるかどうかということとは別に、どんな人間が逃亡話を創作したのかが暴かれ・公共的に晒されるということは、それはそれで意味あることだろうとは思う。