「ホルモン」――関西/関東

ホルモン奉行 (新潮文庫)

ホルモン奉行 (新潮文庫)

角岡伸彦『ホルモン奉行』に曰く、


関東では牛や豚の腸のみをホルモンというが、関西では内臓全般、さらには頭部や足やスジも含めてホルモンと称する。つまり、ロースやヘレなどの正肉*1以外のすべてを指す。本書ではタン(舌)からテール(尾)まで、より幅広くとらえ、関西風にホルモンという呼称を採用した。(p.14)
これを呼んで、なるほどと思うと同時に?も浮かんだ。俺にとって「ホルモン」は「牛や豚の腸のみ」というほど狭くはないが、「タン」や「テール」を含むほど広くもない。まあ、センマイやハツを含む「内臓全般」といったところか。
ところで、「ホルモン」と呼ばれるようになったのは比較的最近で、もともとは「ナカノモン」(中のもの)と呼ばれていたらしい*2。「ホルモン」という言い方が普及したのは「焼肉屋」ができ始めて以降の話であると(pp.25-26)。また、「ホルモン」=〈ほうるもん〉という語源を信じていたのだが、これは在日韓国人朝鮮人の間の民間語源説であるらしい。著者が引用しているのは、野間宏安岡章太郎編『差別 その根源を問う 下』の中の金時鐘氏の発言;

いわゆるホルモン料理。これは決して英語じゃなくて、大阪弁の「ほってしまうもの」、つまり捨ててしまうものの大阪弁である「ホルモン」が定着した”朝鮮人語”なんですよ。屠殺場で捨てられる内臓、頭などを、飯場住まいの同胞たちがもらい受けて食していたものです。(pp.22-23に引用)
さらに、「ホルモン」=「掘りもの」という語源説(柳尚熙『食べて知る韓国』)もあるという(p.23)。因みにほうるが放置することではなく投げる・捨てるという意味の大阪弁だと知った契機は小学校時代のTVの野球中継か。その頃、解説者たちは〈球を投げる〉ではなく〈球をほうる〉と言っていた。

*1:セイニクではなくショウニク。

*2:著者が例示しているのは、兵庫県姫路市兵庫県加古川市奈良県奈良市被差別部落での言い方。