ポリガミーのパラドクス

Robin McKie “Mormon polygamists shared the flaws of the fruit fly” http://www.guardian.co.uk/science/2011/feb/27/mormon-polygamists-fruit-fly


(特に初期の)モルモン教徒は一夫多妻制で知られる*1。しかしながら、Evolution and Human Behaviour誌に掲載されたインディアナ大学のMichael Wadeらの、ユタ州人口データベースに載っている初期モルモン教徒の出生・結婚・死亡記録を分析した研究によると、1人の男性の持つ妻が多くなればなるほど逆に女性1人当たりの出生数は少なくなる。これは遺伝学者Angus Batemanの名を取って「ベイトマン効果」として知られていることだという。その理由は確定されていない。モルモン教の教祖ブリガム・ヤングは生涯に55人の妻を持ち、56人の子をなしたが、ヤングの妻たちの平均出生力は現代少子化社会の女性たちの出生力並みであり、当時の普通というかモノガミーの女性よりも明らかに低いということはいえるだろう。それに加えて、一夫多妻制の場合、複数の妻を持つ男性と妻を持てない(結婚できない)男性との格差が拡がるわけで、一夫多妻制は社会全体の出生力の増大(人口増加)に対しては却ってマイナスの効果を持つと言える。

*1:現在でも一部の〈ファンダメンタリスト〉は非合法的に一夫多妻制を実践している。See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070928/1190947792