承前*1
内田樹氏の「階層化する社会について」*2について。
前のエントリーではその内容には立ち入らなかった。
まあ、「私には知らないこと、できないことはない」と思い込んでいる人間が〈下〉に固定されるというのは当然といえば当然ではある。内田氏が「学ぶ」ことについて語っているので、教育問題に引き付けて言えば、佐藤学氏によれば、所謂「習熟度別指導」においては生徒の側も教師の側も主観的満足度が高くなる。教える内容がすかすかにされているので、それだけ〈わかった!〉という実感が強くなるのだ。しかし、その満足感こそが罠であり、満足しているうちに学力の格差は固定されていく(『習熟度別指導の何が問題か』)*3。
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「教えてください」は助けてくださいに通じる。つまり、「学び始めることができない」人は他者の〈お助け〉を、或いは助けてくれる他者を(主観的には)必要としない人だといえる。しかし、ビートルズも歌っている;
「学ぶ」という行為は次のような単純なセンテンスに還元される。
「私には知らないこと、できないことがあります」
「教えてください」
「お願いします」
これだけ。
これが「学び」のマジックワードである。
これが言えない人間は永遠に学び始めることができない。
実際には「誰かが必要」なのに、Help! と叫べないこと。問題なのはこちらなのではないか。凡庸な結論ではあるけど、これは新自由主義時代におけるもうひとつのクリシェである〈自己責任〉ということに関係しているといえばいえる。
Help, I need somebody,
Help, not just anybody,
Help, you know I need someone, help.When I was younger, so much younger than today,
I never needed anybody's help in any way.
But now these days are gone, I'm not so self assured,
Now I find I've changed my mind and opened up the doors.
http://www.lyrics007.com/The%20Beatles%20Lyrics/Help!%20Lyrics.html
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*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101113/1289668226
*2:http://blog.tatsuru.com/2010/11/10_1216.php
*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060925/1159183238 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080222/1203680722
*4:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080828/1219900795 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080831/1220145450 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081013/1223865948 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090306/1236309160 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090921/1253506155