希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く (ちくま文庫)
- 作者: 山田昌弘
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 文庫
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http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100917/1284736710でもちょこっと言及していたのだが、山田昌弘『希望格差社会 「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』を先日読了。
ベックなどのリスク社会論(例えば『危険社会』)の応用篇という趣き。伝統的に、或いは相対的に長い間リスクをヘッジしていた社会的仕掛け(企業、家族、教育)が逆にリスク源となっているということが重要だろう。
はしがき――先が見えない時代に
1 不安定化する社会の中で
2 リスク化する日本社会――現代のリスクの特徴
3 二極化する日本社会――引き裂かれる社会
4 戦後安定社会の構造――安心社会の形成と条件
5 職業の不安定化――ニューエコノミーのもたらすもの
6 家族の不安定化――ライフコースが予測不可能となる
7 教育の不安定化――パイプラインの機能不全
8 希望の喪失――リスクからの逃走
9 いま何ができるのか、すべきなのか
文献目録
あとがき解題にかえて――文庫版あとがき
- 作者: ウルリヒベック,Ulrich Beck,東廉,伊藤美登里
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 1998/10/01
- メディア: 単行本
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ちなみに、「安心社会」は山岸俊男の用語(『安心社会から信頼社会へ』)*1。また、
(前略)日本社会は、リスク化、二極化のうねりの中にいる。そして、一九九〇年ごろまで存在していた「安心社会」の基盤が崩れつつある。
ニューエコノミーの進展により、職業は不安定なものとなり、新しい経済システムに適応できる能力のある人と、落ちこぼれてフリーター化する人の格差が広がっている。相対的に安定していた家族もリスクを伴ったものとなり、安心して依存できるものではなくなっている。学校教育のパイプライン・システムに漏れが生じ、「努力して学校に行きさえすれば、一定の職に就ける」という期待が急速に失われている。
社会、とりわけ、職業、家族、教育システムが不安定化することは、つまりは、われわれの生活が不安定化して、将来設計図が描けなくなるということである。たとえ、描いたとしても、実現する確率が低くなっている。不安定化する社会に直面して、努力しても仕方がないと希望を失う若者は、あるものは引きこもり、あるものは享楽的消費やアディクションにふけり、あるものはやけになって問題行動を引き起こす。リスクから逃げ出す若者が増え、パラサイト・シングルやフリーターの将来の不良債権化が見込まれ、将来、日本社会の存立基盤を徐々に蝕んでいくことになる。(pp.258-259)
(前略)ニューエコノミーの「負け組」とは、単に生活ができなくて、住居がなくなったり飢えに苦しむ人ではない。「生活に希望がもてなくなっている人」である。相対的に豊かな社会では、人間はパンのみで生きているわけではない。希望でもって生きるのである。ニューエコノミーが生み出す格差は、希望の格差なのである。一部の人は、努力がオールドエコノミーの時代以上に報われるが、その反対側では、努力が報われないと感じる人を産むのである。ニューエコノミーが、平凡な能力の持ち主から奪っているのは、「希望」なのである。
セーフティネットをいうなら、経済的セーフティネットだけではなく、心理的セーフティネットをこそ構築すべきなのである。(p.266)
- 作者: 山岸俊男
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1999/06/01
- メディア: 新書
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