http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100925/1285383582へのコメント;
というか、あの頃のレゲエではボブ・マーリーに限らず、狭い意味でのラヴ・ソングというのは少なかったですけど。「この世に同性愛者など存在していないかのような」ということですけど、たしかにあの頃(というか今でもそうか)、メジャーな大衆文化の世界では、同性愛者の存在自体が隠されていたということはあると思います。日本のTVドラマに〈被差別部落〉は登場しない、そういうものが存在すること自体が隠されている。作り手だって、メロドラマ的想像力において〈障害〉の存在こそがドラマを盛り上げる仕掛けだということは十分承知しているくせに。勿論稲垣足穂やジャン・ジュネは(一部の読書家には)読まれていたし、三島由紀夫のことも知られていたし、(大河ドラマでは描かれないにも拘らず)織田信長と森蘭丸がどういう関係だったのかはみんな知っていた筈。にも拘らず、メジャーな文化の世界は(お約束として)「この世に同性愛者など存在していない」ということになっていた。
Nessko*1 2010/09/25 13:45
ボブ・マーリー、全曲聴いてるわけじゃないんだけど、この世に同性愛者など存在していないかのような歌の世界だった印象しかないですね。
レゲエは、音楽として普遍的なパワーがあるので、世界中にファンも多いし、同性愛者にもレゲエの音楽スタイルが好きな人が多いのでしょう。それで問題にされやすいのかな。80年代ころまでなら異性愛男性の感覚=普遍というのがあたりまえに成立できていましたが、その後だんだんそれが成り立たなくなってきて、一部の男性は非常にとまどっているのかもしれない。自分の感覚が普遍じゃないといわれた際の耐性が女より弱そうだし。
ブラックメタルというジャンルも、ハードロックやヘヴィメタルには昔から見られた傾向が、奇形化して肥大したようなところがあって、白人男性のサブカルでもレゲエと同じようなことが起こってるんだろうなと想像してしまった。
白人男が被害妄想に陥ったら凄まじい自衛的攻撃力を爆発させそうで、ジャマイカのレゲエより怖いですけどね。でも、ブラックメタルという音楽ジャンルは、一部マニアには受けても、レゲエみたいな普遍的パワーは持てないと思う。
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100925/1285383582#c1285389908
「異性愛男性の感覚=普遍」が相対化され・崩れていることがゲイ・バッシング過激化の背景にあることはたしかです。しかし、その作用は両義的であると思う。J. Barrettという学者は所謂「ワールド・ミュージック」が西側の白人男性に受容された一因として、1960年代以降の社会・文化変動の中で西側社会の人々が自らの周辺性や相対性に気づくことによって非西洋音楽へのアイデンティフィケーションが可能になったことがあると論じています(”World Music, Nation and Postcolonialism” Cultural Studies 10-2, 1996. Cited in 角田幹夫「現代社会における音楽の存立構造」in 『ソシオロジカル・クエスト』、p.222)。勿論、自らを弱者だと思い込む被害者意識が禍々しい暴力の源泉であるということはあるけですが。
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ところで、瓜田純士の牛丼投げには或る種の階級性を感じたということはある。「ユダヤ」だの「金融寡頭勢力」だのを持ち出して屁理屈を捏ねなければ「同性愛」や「フェミニズム」を嫌いだと言えないベンジャミン・フルフォード*2とかとは(良くも悪くも)かなり違うとはいえる。
それから、男性性の危機と「同性愛」差別ということでは、ロバート・アルトマン*3が『バレエ・カンパニー』でバレエ界における同性愛差別に言及していることを指摘しておく*4。世間(米国社会)では男の子がバレエに憧れるだけで同性愛認定してしまう傾向があり(マルコム・マクダウェルの語り)、それに対する防衛的反応としてストレートのダンサーたちは同性愛者を差別する。
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*1:http://d.hatena.ne.jp/nessko/
*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100923/1285214473
*3:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061122/1164192807
*4:特にオーディオ・コメンタリーを参照のこと。