韓国からの海女

『読売』の記事;


「韓国の海女いないと立ちゆかぬ」漁業者の悲鳴


 三重県紀北町内で海女として働いていた韓国籍の女8人が先月、入管難民法違反(資格外活動など)の疑いで、名古屋入国管理局と県警に摘発された。

 背景にあるのは慢性的な担い手不足。舞台となった海野(かいの)漁協の漁業者からは、「韓国の海女に頼らないと生活が立ちゆかない」と、悲痛な叫びも聞こえてくる。

 紀北町は、熊野灘を臨むリアス式海岸と大台山系の急峻(きゅうしゅん)な山々に挟まれた人口約2万人の小さな町。

 「船長さんですか」――。先月10日朝、港で漁の準備をしていた男性(55)に、名古屋入管の職員が尋ねた。男性は漁期になると、韓国から海女を呼び寄せていた。90日間の観光ビザが切れそうになると一時帰国させ、再び入国させる手口で、先代から数十年にわたって続けてきたという。

 「違法なのは分かっていたが、地元には海女のなり手がおらず、十分に漁ができない」。男性は苦しい胸の内を明かす。摘発時に雇っていた50歳代の海女2人は韓国へ強制送還され、その後は妻と義母の3人で細々と漁を続けた。

 海の博物館(鳥羽市浦村町)によると、全国の海女の約半数にあたる1081人(2007年現在)が働く鳥羽・志摩地域に比べ、海野漁協など東紀州地域の海女は「数えるほどしかいない」という。リアス式海岸で好漁場の鳥羽・志摩地域の伊勢湾に対し、東紀州地域の熊野灘沿岸はアワビなどが育つ岩礁が少ないためだ。

 それに加え、鳥羽・志摩地域のある漁業関係者は、同漁協で後継者が不足している理由について、「乱獲による資源不足もあり、海女になっても安定した収入が見込めないためだ」と指摘する。

 同漁協には、一定の海域の漁業権を買えば、漁期にどれだけ取っても構わない「磯売り」という珍しい制度がある。韓国から海女2人を呼んでいた男性は、「船で10分で回れるほどの広さを、1漁期900万円で買った」という。

 また、海女漁の中心となるアワビは、県の規則で元日から9月14日までと漁期が定められている。鳥羽・志摩地域のある漁協は漁期を15日間とするなど、資源管理の観点から自主規制しているが、海野漁協の漁期は1月15日から8月末までと長い。人手不足で長期にわたって漁をしないと暮らしていけないというジレンマもある。

 鳥羽・志摩地域でも、海女の数は戦後間もなくの1949年(6109人)に比べて約6分の1に激減した。そのため、鳥羽、志摩市など3市1町が出資する横山ビジターセンター(志摩市阿児町)は、担い手発掘のため、今年7月から海女漁体験ツアーを始めた。参加した40歳代の女性1人が興味を示しているという。一方、紀北町産業振興課は「海女に絞っての漁業支援策は考えていない」とする。

 日韓両国の海女に詳しい同博物館の石原義剛館長は「政府は、インドネシア人やフィリピン人の看護師を受け入れた。外国人の海女が合法的に漁ができるような法整備も必要ではないか」と提言している。(加藤雅浩)
(2010年9月6日16時02分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100906-OYT1T00310.htm

人手不足を漁期の延長で穴埋めし、そのために資源不足に拍車がかかり、収入が不安定化し、さらにそれがさらなる人手不足につながるという悪循環。
ところで、「韓国籍の女」とか「手口」とか、この記事の書き方はいやらしい。
「海女」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090727/1248634457 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100115/1263535141 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100518/1274141582も参照のこと。