トラウマと擬似ALS

Alan Schwarz “Study Says Brain Trauma Can Mimic A.L.S.” http://www.nytimes.com/2010/08/18/sports/18gehrig.html


先日亡くなったTony Judt*1筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っていたが、米国では大リーグ選手の名に因んで「ルー・ゲーリッグ病(Lou Gehrig's disease)と俗称されている。上の記事によると、マサチューセッツ州ベッドフォードの「復員兵医療センター(Veterans Affairs Medical Center)」*2ボストン大学医学院の研究者たちはALSと診断されたNFLの元選手と元ボクサーの症例を再検討した結果、脳震盪のような脳のトラウマ*3がALSに類似した症状を引き起こすことを明らかにした。これは運動神経の機能低下においてALSに類似しているが、その一方で認知症を伴うことにおいてアルツハイマーにも類似している。また、脳組織の破損を食い止めることで病気の進行を止めるという途も拓けてくる。この記事は科学欄ではなくスポーツ欄に掲載されているのだが、病名の由来ともなったルー・ゲーリッグの病気の再解釈の問題も浮上してくる。但し、ゲーリッグの遺体は火葬されており、今更脳を解剖することは不可能ではあるが。ALSの再定義という問題もある。ALSの原因はいまだ不明であるが、今回のように脳への物理的ダメージという原因がわかった症例をALSから外すのかどうか。運動機能が急激に衰退する病気としてALSを緩く定義すると、伊太利ではプロのサッカー選手は一般人の6倍ALSのリスクが高いという研究も出ている。
See also


Alan Schwarz “Linking Head Trauma and A.L.S. in Military” http://www.nytimes.com/2010/08/18/sports/baseball/18soldiers.html


さて、Tony Judtについて、http://d.hatena.ne.jp/yasu-san/20100810/1281748149経由で


Peter Jukes “Tony Judt: a man of his word” http://www.prospectmagazine.co.uk/2010/07/tony-judt-a-man-of-his-word/


を知る。

*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100810/1281406537 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100811/1281489866

*2:http://www.va.gov/

*3:これは心理的なものではなく、あくまでも物理的なダメージとその後遺症。