減っている?

小尾拓也「「少子化の原因は非正社員の増加のみにあらず。未婚者を増加させる社会構造の変化にある」――東京大学佐藤博樹教授インタビュー」http://diamond.jp/articles/-/9028


佐藤俊樹ではなく博樹。
少子化の原因でもある未婚率の上昇の主原因は雇用の非正規化ではない。つまり、未婚率の上昇は非正規雇用の人だけでなく、〈勝ち組〉たる正社員の間でも見られる。ただ、〈勝ち組〉は〈勝ち組〉で、労働時間が長すぎるというような問題を抱えている筈なのだが。日本におけるホワイトカラー労働の低生産性。そして低生産性の長時間労働による糊塗(See eg. 橋本努『自由に生きるとはどういうことか』、p.250ff.)。

さて、「職場における男女の出会いの機会が減った」という。たしかに、1960年代から80年代にかけて「職場」がお嫁さん/お婿さん探しの場として機能していたということはあった。それが機能しなくなったからこそ、〈婚活〉なるものが焦点化される(See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090702/1246559972 また、北村文阿部真大『合コンの社会学』を参照のこと)。佐藤氏が指摘する男女間の意識のずれ、職場における人間関係の変容というのはたしかにそうなのだけど、社会全体として見れば、またその一部である「職場」においても実は「男女の出会いの機会」は増えている筈なのだ。1980年代前半だと、大学の学部毎のジェンダーのアンバランスというのは顕然と存在していた*1。文学部は女子の過剰、社会学部になると男女の比率が均衡してきて、経済学部や法学部は圧倒的に男子の世界。また、理系は薬学部を除けば野郎の世界だった。こうしたアンバランスは遅々たるものであれ、その後改善されている筈である。「職場」におけるジェンダーのバランスにしても然り。なので、現在青春している人たちは30年前や40年前に青春していた人々よりも「男女の出会いの機会」が多い環境で生活していることになる。これを背景にして、例えば山田昌弘氏などが〈恋愛格差社会〉を論じていた筈。つまり、人口問題研究所の未婚者調査において、恋人や婚約者がいるという回答と異性の友人が全然いないという回答がともに一貫して増えている。つまり、「機会」が増えて、モテる奴とモテない奴の格差が顕在化したというわけだ。
合コンの社会学 (光文社新書)

合コンの社会学 (光文社新書)

佐藤氏の処方箋はどうか。企業が「社員の「コミュニケーション能力」や「人間関係構築力」の向上を支援すること」。「コミュニケーション能力」はあった方がいいけど、それよりも過剰な労働時間を減らすことの方が重要だろう。低生産性の克服。仕事外の時間が増えれば「男女の出会いの機会」が増えるわけだ。しかし、「機会」が増えれば増えるほど、格差は顕在化する。或る意味で、こっちの方が非モテには辛いかもしれないけれど。

*1:それ以前に、女子は短大まででよろしいという通念もまだ存在していた。