無税国家への夢

承前*1


 法人税所得税相続税を上げろという左派の主張は、悪くすると国の財政が大企業経営者や高額所得者に依存するという構造を強化し、「国の財政を支えているのは俺たちだ」という、彼らの歪んだプライドを醸成しかねない危険性を持っている。結果どうなるかというと、貧困者への直接的な所得分配よりも、大企業の体力を支えるような、産業政策が選好されるようになる。

 前にも言ったように、誤解を恐れずに言えば、税というのは少し逆進的であるくらいのほうがかえっていいのである。むしろ失業者・無業者であっても、所得から言えばより高い負担に応じているという事実は、彼らに対する所得再分配や雇用保障を正当化する強力な根拠になる。逆に言うと、再分配の構造に手を加えず、これまでのような財政再建主義的で、高齢者福祉の財源を埋めるための増税に過ぎないのであれば、消費税を採用しては断じていけない。
http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20100627/1277600849

私は「逆進的」はできるだけ避けるべきだという立場だが、傾聴すべき意見だといえよう。
さて、最近逆進的/累進的というのを超えて、「「税」自体に拒絶反応を示している」人、すなわち無税国家を夢見ている人が多いという*2。無税国家ということで思い出すのは、クウェートのようなイスラーム系の産油国君主制国家である。こうした国が〈民主〉的ではないひとつの理由には国家が国民から財政的に独立しているということがあるだろう。また、かなり昔のことだが、北朝鮮には税金というものがないということでマンセーしていた人がいた*3産油国は豊かで北朝鮮は貧乏という違いはあっても、どちらも民主制に縁が薄いということは共通している。

http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10586619701.htmlは、1997年の橋本龍太郎内閣による消費税引き上げと自殺数の急増を結びつけた意見。ただ、橋本内閣は消費税を引き上げるとともに緊縮財政も行っていたのであり、消費税率の引き上げと緊縮財政、どちらの影響が強かったのかは微妙だろう*4

さて、消費税が上がればC2Cの取引が絶対に活性化するよね。フリー・マーケットとかガレージ・セールとか。