梅棹忠夫

毎日新聞』の記事;


訃報:梅棹忠夫さん90歳=文化人類学「文明の生態史観」


 「文明の生態史観」などの独創的な著作で知られ、日本の民族学文化人類学研究をリードしてきた国立民族学博物館(民博)顧問で初代館長の梅棹忠夫(うめさお・ただお)さんが3日、老衰のため亡くなった。90歳。連絡先は大阪府吹田市千里万博公園10の1、民博気付。

 1920年京都市生まれ。京都大理学部動物学科卒。同大学院特別研究生、蒙古善隣協会西北研究所嘱託を経て、49年大阪市立大理工学部助教授。65年京大人文科学研究所助教授。同教授を経て74年、日本万国博(70年)跡地に創設された民博の館長に就任した。93年に退任後、名誉教授・顧問。91年文化功労者。94年文化勲章。理学博士。京大名誉教授。京都市名誉市民。日本山岳会名誉会員。毎日新聞社特別顧問。

 京都・西陣の織物の商家に生まれ、昆虫好きの少年として育った。故今西錦司・京大名誉教授(当時講師)に師事し、太平洋のポナペ島(現ポンペイ島)、中国東北部の大興安嶺、内モンゴルを学術探検した。

 大学では動物生態学を専攻したが、戦後は文化人類学、文明学に転じ、アフガニスタンや東南アジア、東アフリカ、ヨーロッパ、中国など世界各地を調査。55年の京大カラコルム・ヒンズークシ学術探検隊に加わった体験をもとに57年、ユーラシア大陸の両端の日本と西欧の文明が並行して発展したとする論文「文明の生態史観序説」を発表し、西欧中心の世界観の見直しを迫るユニークな視点が反響を呼んだ。

 民族学文化人類学の調査研究の拠点として民博の設立に尽力し、一般にも親しまれる博物館とした。比較文明論や日本文化論、女性論、生きがい論、情報産業論、日本語論など幅広く、自由な発想でユニークな論を平易な文章で展開した。「モゴール族探検記」(56年)「知的生産の技術」(69年)はベストセラーとなった。

 民博館長だった86年に失明したが、その後、「梅棹忠夫著作集」(全22巻、別巻1)を完成させるなど、執筆活動は衰えなかった。
http://mainichi.jp/enta/art/news/20100706k0000e040062000c.html

『文明の生態史観』については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070327/1175006715http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090716/1247679249で言及している。『モゴール族探検記』は1980年代に岩波新書の旧著復刊で買って・読んだのだが、『知的生産の技術』と並ぶような「ベストセラー」だったとは知らなかった。『知的生産の技術』はKJ法川喜田二郎*1といった人々とともに、思想史的・知識社会学的な考察がなされるべきだとは思う。
文明の生態史観 (中公文庫)

文明の生態史観 (中公文庫)

モゴール族探検記 (岩波新書 青版 F-60)

モゴール族探検記 (岩波新書 青版 F-60)

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)